1999年以来、次代を担う有望な人材の育成を図ることを目的として実施されてきた全国公募の「清須市はるひ絵画トリエンナーレ」。これまでの多数の受賞者を輩出してきた同展が、今年で9回目の開催を迎える。
高北幸矢(造形作家、清須市はるひ美術館館長)のほか、岡﨑乾二郎(造形作家、批評家、武蔵野美術大学客員教授)、加須屋明子(キュレーター、批評家、京都市立芸術大学教授)、杉戸洋(画家、東京藝術大学准教授)、吉澤美香(画家、多摩美術大学教授)の5名が審査員を務めた今回は、過去最多となる637名から1261点の応募があり、その中から選ばれた入賞8点と入選20点が、5月4日より清須市はるひ美術館で展覧される。
今回、みごと大賞を射止めたのは、1993年三重県生まれの田岡菜甫(なほ)。2018年に武蔵野美術大学大学院の油絵コースを修了したばかりの田岡は、これまで第11回グラフィック「1_WALL」展(2014)にファイナリストとして選出されたほか、トーキョーワンダーウォール公募2015に入選。受賞作となった《遠吠え》は、最初にマジックを使用してモチーフを線で描き、たとえ間違えても消さずに最後までその線を残し、「失敗した線に責任を持って描き続けていく」という手順を踏んで描かれている。
本作について審査員の岡﨑は次のように評する。「一つの画面に見えますが、どのエレメントも反復されていて、一つの画面のなかに二つの別の時間あるいは空間のずれが含まれているように見えてくる。これは手法上の癖かもしれないし、意識的にやっているかもしれないけれど、『意識的にあえてやっていますよ』と見えないところが面白い。微妙なさじ加減です。が、一番説得力があったのは、こうした構造を感じさせることなく、ためらいなく一挙に描かれているということです。具体的にすばやく塗られた紫の色の発色、軽やかさが誰よりも鮮やかに見えた。そこに決断力が感じられた」。
なお、このほかの受賞作は、準大賞が田中秀介《言葉なく勝手に旺盛》と堀至以(ちかい)《glow》の2点。
優秀賞には、秋山萩彦《Andenken. 詩人の追想は黄金の春の夢想へと変り》、阿部紅《ピアニー》、羽尻敬人《樹草の呪術 樹草の呪術7》、岡本秀《長安のお墓の絵の絵》、しまだそう《VITA NOVA Ⅳ》の5点が、入選20点の中から清須絵画トリエンナーレ実行委員会が選出する「きよす賞」には、干場月花の《青になるまで。》がそれぞれ選ばれた。