5月20日〜27日の期間中、サザビーズが初めての女性アーティストに特化したオークション「(Women)Artists」をオンラインで開催する。
同セールは、オールドマスターから現代美術まで、400年にわたる女性アーティストをカバーするもの。1687年に当時22歳のオランダ人画家レイチェル・ルイシュが描いた静物画から、1930年代に女性として初めてロイヤル・アカデミーの正式なメンバーとなったラウラ・ナイト、そして女性初のターナー賞受賞者であるヤング・ブリティッシュ・アーティストのレイチェル・ホワイトリードの彫刻作品などの作品が出品される。
サザビーズ・ロンドンの現代美術スペシャリストであるマリーナ・ルイズ・コロマーは声明文で、同セールについて次のようにコメントしている。「『男性アーティスト』ではなく、『女性アーティスト』という対立的な分類は、何十年にもわたって論争されてきた議論の核心であり、いまだによく陥る罠だ。女性アーティストは分類されるべきではなく、差別されるべきではない。だからこそ、私たちはこの議論を覆すために、まさにそのように見えるセールを開催するのだ。これらのアーティストは女性だが、それ以上に重要なのは、彼女たちがアーティストであるということだ」。
また5月には、マリーナ・アブラモヴィッチを招き、あらゆる芸術活動における女性の歴史を探るバーチャルパネルディスカッションも開催予定。今回のセールについて、アブラモヴィッチはこう語っている。「女性アーティストの作品が過小評価されていることに、大きな不公平感を感じている。シンディ・シャーマンのように作品が高値で取引されている人もいるし、それは彼女にとって大きな正義だと思う。しかし、彼女のようなプロフィールを持たない素晴らしい人たちもいて、その作品は素晴らしいものだ」。
サザビーズの調査によると、過去5年間で、女性アーティストの価格上昇率は、市場全体で男性アーティストを29パーセント上回っている。とくに現代美術とオールドマスターの市場においては、女性アーティストの価格上昇率はそれぞれ49パーセントと45パーセントとなっており、ともに男性アーティストの上昇率を超えている。
いっぽう、Artmarket.comが4月に掲載した記事では、同社創設者兼社長のティエリ・エールマンは、「アートオークションの売上高に占める女性アーティストの割合は、20年間で4パーセントから8パーセントへと、世界全体で倍増している。しかし、アルテミジア・ジェンティレスキ、フリーダ・カーロ、シンディ・シャーマンなどの主要な女性アーティストの数に比べれば、まだあまりにも少ない状態だ」と述べている。
これまで女性アーティストの作品のオークションにおける過去最高額を記録したのは、2014年にサザビーズ・ニューヨークにて4440万ドルで落札されたジョージア・オキーフの《Jimson weed/White flower no.1》で、現存女性アーティストのオークション記録は、18年にサザビーズ・ロンドンで1250万ドルで販売されたジェニー・サビルの《Propped》だ。これらの数字は、男性アーティストと現存男性アーティストのオークションにおける過去最高額を記録した、レオナルド・ダ・ヴィンチの《サルバドール・ムンディ》(落札価格は約4.5億ドル)とジェフ・クーンズの《ラビット》(落札価格は9107.5万ドル)の数分の一となっている。