美術品市場分析会社「ArtTactic」が発表したレポートによると、2019年上半期の世界オークション売上高が、前年同期比で20.3パーセント減の55億5000万ドル(約6000億円)となった。オークション・ハウスの3巨頭であるサザビーズ、クリスティーズ、フィリップスの売上高もそれぞれ減少したという。
世界3大オークション市場であるニューヨーク、ロンドン、香港におけるオークション売上高は、前年同期比で22パーセント、24.1パーセント、6.4パーセントの減少を示している。パリ、アムステルダム、ジュネーヴでのオークション売上高も、14.4〜33パーセント減少。いっぽう、ドバイとチューリッヒの場合は、41.1パーセントと112.6パーセント増加している。
「Financial Times」の分析によると、全体減少の要因はふたつある。まずは印象派・近代美術の後退だ。18年にクリスティーズで行われた故デイヴィッド・ロックフェラーとペギーよる美術品コレクションのオークションシリーズは、個人コレクションとして史上最高額となる落札総額8億3257万3469ドルを達成し、18年上半期の数字を通常より高めた。
今年上半期ではクロード・モネの《積みわら》がモネと印象派のオークションにおける過去最高額となる1億1070万ドルを記録したものの、世界全体で印象派・近代美術部門の売上高は、18年同期の24億ドルから15億ドルに大幅減少した。
もうひとつの要因が、中国・アジア美術だ。米中貿易戦争の影響もあり、中国・アジア美術は継続的に減少。17年上半期に9億5100万ドルの売上高を達成した中国とアジア美術は、18年同期に8億7500万ドルに減少し、今年はさらに4億4700万ドルにほぼ半減した。
ArtTacticの創設者であるアンダース・ペッテソンは、「貿易戦争と米中間の不信の高まりは、2019年後半にアジア、とくに中国市場への悪影響を拡大する可能性が高い」とコメントしている。
いっぽう、戦後・現代美術部門は、前年同期の22億ドルから23億ドルへと微増し、市場の40.7パーセントを占めている。今年5月にクリスティーズ・ニューヨークで開催されたオークションで、9107万5000ドルで現存アーティストのオークションにおける過去最高額を更新したジェフ・クーンズの《ラビット》の落札も、戦後・現代美術オークションの勢いを示すものと言えるだろう。