ロンドンの美術館、サーペンタインはデザインスタジオのFormafantasma(フォルマファンタズマ)を新設する「Lead R&D Fellows, Ecology(エコロジー部門 リードR&Dフェロー)」に任命したと発表した。複数年にわたる協働を通じて、展覧会やパブリック・プログラムに加え、組織運営や資源利用、労働環境など、美術館活動全体にエコロジカルな視点を組み込むことを目指す。
フォルマファンタズマは、アンドレア・トリマルキとシモーネ・ファレジンによって2009年に設立されたリサーチベースのデザインスタジオ。ミラノとロッテルダムを拠点に、プロダクトデザインから空間設計、企業との協働、リサーチプロジェクトまで幅広く手がけ、環境問題や資源、産業史、社会構造を横断的に問い直す実践で国際的な評価を得てきた。

両者はすでに2020年、サーペンタイン・ノース・ギャラリーで木材産業をテーマにした展覧会「Cambio」を開催している。同展では、森林資源をめぐる生態学的・政治的・経済的な問題を多角的に検証し、デザインを環境危機の一因であると同時に、その解決に向けた可能性として捉え直した。今回の就任は、その協働をさらに発展させるものとなる。
活動は2026年夏から開始される。まずはサーペンタインのキュレーションや運営体制、資源管理など既存のシステムを調査・分析し、長期的な変革につながる課題や介入の可能性を検討。その成果をもとに、リサーチ、実践、知識共有を軸とした複数年のパブリック・プログラムも展開し、研究のプロセスや方法論を広く社会へ発信していく予定だ。

フォルマファンタズマは声明で、「2020年の『Cambio』から始まった対話を継続できることを光栄に思います。理論から実践へと移行するなかで、まず地域レベルから始め、それを制度全体へと広げていくアプローチを重視したい」とコメント。「キュレーションや空間、資源、労働、エコロジーをめぐる制度の市民的役割をあらためて問い直し、緊急性を認識しながらも知識や複雑性、説明責任を重視した新たな対話の場を築きたい」と抱負を語った。
サーペンタインのチーフ・エグゼクティブ、ベティーナ・コレックは、「アーティストやデザイナーは、私たちが何を展示するかだけでなく、どのように考え、行動し、運営するかにも影響を与えています。今回の協働は、エコロジカルな思考を制度や空間、日々の実践へと拡張し、美術館という組織が環境危機のなかで果たす役割を問い直すものです」と述べた。
また、アーティスティック・ディレクターのハンス・ウルリッヒ・オブリストは、「2009年以降、故グスタフ・メッツガーとの協働を通じて、サーペンタインはエコロジカルな思考を活動に組み込んできました。素材の歴史から未来の生存条件までを問い続けるフォルマファンタズマとともに、この取り組みを新たな段階へ進められることを楽しみにしています」とコメントした。
サーペンタインはこれまで、グスタフ・メッツガーとの協働イベント「Extinction Marathon」をはじめ、2018年には「General Ecology」プログラムを立ち上げるなど、環境問題を組織全体の重要なテーマとして位置づけてきた。今回の新たなフェローシップは、その取り組みをさらに発展させるものであり、美術館運営そのものをエコロジーの観点から再構築する実践として、今後の文化機関のモデルケースとなることが期待される。























