ジェームズ・タレル、自身最大規模となる100作目の「スカイスペース」を公開。デンマークのアロス・オーフス美術館に誕生

デンマークのアロス・オーフス美術館にて、ジェームズ・タレルの新作インスタレーション《As Seen Below - The Dome, a Skyspace by James Turrell》(2026)が公開された。高さ16メートル、直径40メートルにおよぶ本作は、タレルが生涯で手がけた100点目の「スカイスペース」シリーズ作品であり、美術館に設置された同シリーズとしては過去最大規模となる。

James Turrell《As Seen Below》(2026)Photo: Florian Holzherr ©ARoS 2026. Sunset in As Seen Below.

 夏至を目前に控えた2026年6月19日、デンマーク第2の都市オーフスに位置するアロス・オーフス美術館にて、ジェームズ・タレルのインスタレーション《As Seen Below - The Dome, a Skyspace by James Turrell》(2026)が常設作品として公開された。

クエーカーの静寂から飛行体験へ。半世紀に及ぶ「光」の探求

 ジェームズ・タレルは1943年ロサンゼルス生まれ。沈黙と観想を重んじるクエーカー教徒の家庭環境に育ち、幼い頃から光への関心を持った。青年期に飛行機の操縦免許を取得したタレルは、飛行を「空とその広大さに吸収されるような瞑想的な体験」と表現し、高度や天候によって変化する光や色を上空から観察し続けてきた。

James Turrel (2015) photo by Morten Fauerby

 美術、数学、知覚心理学の教育を受けたタレルは、1960年代に興った「ライト&スペース・アート」の主要人物となり、人間の「見る」という行為そのものを問い直す作品制作に没頭していく。本作を含む「スカイスペース」シリーズはアリゾナ州のペインテッド砂漠にある死火山の噴火口を舞台とした壮大なライフワーク《Roden Crater》(1977頃)と並び、タレルの探求の主軸となっている。

空を望むか、光に浸るか。体験が移り変わる「3つのモード」

 本作は、タレルにとって記念すべき100点目の「スカイスペース」シリーズ作品であり、美術館で設置されたものとしては過去最大規模となる。ローマの古代建築パンテオンにも比肩する規模の大きさで、半世紀以上にわたり光と空間の知覚を探求してきたタレルのキャリア、そして同館の歴史の双方において重要な節目となる作品だ。

ARoS and As Seen Below ‐ The Dome, a Skyspace by James Turrell. Photo: Adam Mørk, 2026.

 来館者は、まず地下に伸びる回廊を通り抜け、その先に広がる広大なドーム状の屋内空間へと導かれる。ドームは高さ16メートル、直径40メートルに達する。タレル特有の光が空間全体を洗い流すように満たし、頭上の大きな円形の開口部から、どこまでも続く空をフレームの中に収めている。その大きな特徴は、空間の性質が劇的に変化する3つの鑑賞モードが備わっている点だ。

James Turrell《As Seen Below》(2026)Photo: Florian Holzherr ©ARoS 2026. Sunset in As Seen Below.

 ひとつ目の「オープン・スカイ(Open Sky)」モードでは、ドームの頂部が開かれ、切り取られた空が絶えず変化する生きたキャンバスとして提示される。遠近感をはかるための参照点となる、見慣れた地上の風景が取り払われることで、空は純粋で鮮烈な色彩の空間として現れる。来館者が到着時にまず目にするのがこの状態であり、開館時間中に予約なしで体験できる。

James Turrell《As Seen Below》(2026)Photo: Florian Holzherr ©ARoS 2026. Sunset in As Seen Below.

 ふたつ目の「カラー・シフト(Colour Shift)」モードでは、空の開口部が閉じられる。これにより、鑑賞者の意識は外の空から内部の光と色彩そのものへと集中する。壁が光の中に溶け込み、空間全体が流動しているかのような知覚をもたらす。ここでは光がたんなる照明ではなく、空間をかたちづくり、身体を包み込む実体のある物質として立ち現れる。このモードは開館時間中、1時間ごとに実施される。

James Turrell《As Seen Below》(2026)Photo: Florian Holzherr ©ARoS 2026. Sunset in As Seen Below.

 そして、昼と夜の狭間に実施されるのが特別な「トワイライト(Twilight)」セッションだ。開口部が開かれた状態で、日の出や日の入りに合わせてドーム内部の光がゆっくりと色を変えていく。タレルが「私は空を、あなたが望むどんな色にでも変えることができる」と語るように、内部の色彩操作によって、見上げる空の色も刻一刻と変化しているかのような錯覚が生まれる。

 「本作は、自然、空、そして私たちが共有する地球との関係を強調するために、光と季節の詩情によって主導される集合的な体験を提供します」とタレルはコメントしている。半世紀を超える光への問いかけが結晶化したこの巨大空間は、訪れる者に新たな世界の捉え方を根本から更新するものになる。

変革をもたらす大規模拡張計画

 同館の館長兼CEOであるレベッカ・マシューズは、本作の公開に際し次のように以下のように喜びを述べた。 「これはアロス・オーフス美術館にとって変革の瞬間です。本作の公開によって、私たちは現代においてもっとも重要なアーティストの記念碑的な作品を紹介するだけでなく、驚き、省察、そしてつながりの場を創出しています。この類まれな作品は、私たちに歩みを緩め、新しい視点をもたらし、革新的な方法で周囲の世界と関わるように促してくれます」。

ARoS and As Seen Below ‐ The Dome, a Skyspace by James Turrell. Photo: Adam Mørk, 2026.

 同館はこれまで大規模な拡張プロジェクトを進めてきたが、このプロジェクトは建築事務所シュミット・ハマー・ラッセンおよびオーフス市との協働によって進められた本作の公開によって、すべて完了した。この拡張には、2025年6月にオープンしたコミッション・ワークのための地下展示室「サリング・ギャラリー」や、屋外のアート広場「アロス・アート・スクエア」が含まれている。オラファー・エリアソンの《Your rainbow panorama》(2011)やロン・ミュエクの彫刻《Boy》(1999)といったアイコニックな収蔵品で知られる同館。本作が加わったことで、同館のインスタレーション・アートにおける世界的な拠点としての存在感はさらに高まることになるだろう。

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