水の記憶を紡ぐ巨大アート。大巻伸嗣《みずのはし》が都庁前に出現

東京都の文化プロジェクト「TOKYO CITY CANVAS」第2弾として、都庁第一本庁舎前に巨大アートが登場する。アーティスト・大巻伸嗣による作品《みずのはし》は、西新宿の過去の歴史に着想を得たもので、流れる水の文様をモチーフにした独創的なデザインが特徴だ。

 東京都が取り組んでいる文化プロジェクト「TOKYO CITY CANVAS」。その一環として都庁第一本庁舎エントランス前に巨大なアート空間が登場する。

 このプロジェクトは、工事現場の仮囲いをキャンバスに見立てて、都市の景観を彩ることを目的としている。今回の作品を手がけるのは、アーティストの大巻伸嗣であり、作品名は《みずのはし》だ。

 この作品は、西新宿エリアのかつての姿である「淀橋浄水場」の歴史に着想を得て、水をテーマにしたデザインとなっている。浄水場は1965年までこの地に存在し、都市の水道インフラを支えていたが、現在はその跡地に高層ビルが立ち並び、都庁が象徴的にそびえ立っている。

 大巻の作品は、水の流れをモチーフに、多くの人々が交差する都庁を象徴する大きなうねりを表現している。作品にはミラーシートが使用されており、水面の輝きや反射が再現され、空間に立体感と明るさを生み出す仕掛けが施されている。これにより、同作はたんなる視覚的な美しさだけでなく、場所の記憶や歴史を象徴するものとしての役割も果たす。

 作品の設置場所は、都庁第一本庁舎の中央エントランス前であり、工事仮囲いとして高さ3メートル、幅延べ約120メートルにわたる大規模な作品となる。また、都道橋脚にも高さ約3.4メートルの作品が掲出され、作品全体が都市の一部として人々の目を引くことだろう。公開期間は2024年9月下旬〜25年2月末を予定しており、東京都民や観光客にアートを通じて都市の歴史に触れる機会を提供する。

 大巻によれば、この作品には、日本において水が持つ特別な意味が込められている。日本では水が日常的に利用されるいっぽうで、ときに畏怖の対象ともなる。幕末から明治にかけて集められた水の文様は、力強さ、しなやかさ、そして儚さといった様々な情緒を表現しており、その文様を組み合わせることで、大きなうねりを生み出すことを意図しているという。

 今回のプロジェクトについて、大巻は次のようにコメントしている。「都市開発が進む中で、その土地が本来持っていた空間性や地形、歴史、そして人々の記憶はしばしば失われてしまう。しかし、このプロジェクトを通じて、アートがその記憶や歴史を掘り起こし、人々と場所とのつながりを再び感じられるようにしたい」。同プロジェクトが過去と現在をつなぐ架け橋となり、都市に新たな物語を紡ぐ契機となることを期待している。

 「TOKYO CITY CANVAS」プロジェクトは、都市のアートシーンを活性化させるだけでなく、歴史や文化を未来へと伝える重要な試みとして、多くの人々の注目を集めるだろう。

編集部

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