大巻伸嗣は1971年岐阜県生まれの美術家。2016年より東京藝術大学美術学部彫刻科およびグローバルアートプラクティス専攻の教授を務めている。大巻の作品は、色鮮やかな紋様や軽やかな布、シャボン玉などを用いながら、展示空間を非日常的な世界に変容させ、鑑賞者の身体的な感覚を呼び覚ます手法を特徴とする。
また、大巻は人々と協働して制作を行うことによって、アートと社会が関わることに意義を見出してきた。その活動は、03年に第6回岡本太郎記念現代美術大賞特別賞、15年に第8回円空大賞円空賞、16年に第27回タカシマヤ美術賞を受賞するなど、高い評価を受けている。
今回、大分県日田市内の2会場で開催される個展「SUIKYO」は、「水の森」をテーマに展開されるもの。「水郷ひた」と通称される日田市は、山紫水明の里として知られている。大巻は、本展を開催するにあたって地図を片手に町をリサーチ。本展では、豊かな自然を舞台に、同地の歴史や文化から着想を得て制作されたサイトスペシフィックな作品群がならぶ。
日田市複合文化施設 AOSE 多目的ホールでは、大巻の代表作のひとつ「Liminal Air」シリーズの新作も公開。世界中で発表されつづけている本作が、今回どのような新しい展開を見せるのかに注目が集まる。
加えて、1933年の開業以来、地元民から愛されていた旧料理屋「盆地」も本展の舞台となる。今回大巻は、昭和の終わりに閉業してから空き家となっている「盆地」の建物全体を大胆に作品化する。
展覧会タイトルの「SUIKYO」(水郷/水鏡)が表すように、大巻ならではの視点でとらえた「水郷ひた」が映し出される本展。ここでしか体験できない作品鑑賞を通じてを通じて、同地が誇る自然を堪能したい。