著名人のポートレートから建築まで、幅広い被写体を作品としてきた写真家・篠山紀信が1月4日に逝去した。享年83歳。
篠山紀信は1940年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科在学中の61年に広告写真家協会展APA賞を受賞し、広告制作会社「ライトパブリシティ」を経て、68年よりフリー写真家としての活動をスタートさせた。66年には東京国立近代美術館の「現代写真の10人」展に最年少で参加。76年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館に代表作家として選ばれるなど、キャリアの初期から高い評価を得てきた。
1980年代以降は多くの写真集を発表。バブル経済による都市の変貌をとらえた「TOKYO NUDE」から、『BRUTUS』での連載「人間関係」、2011年の東日本大震災が残した爪痕を写した「ATOKATA」、そして東京オリンピックに向かって変化を続ける東京を撮った「TOKYO 2020」といったシリーズを発表。2021年には60年代からのその仕事を振り返る回顧展「新・晴れた日 篠山紀信」が、東京都写真美術館で開催された。
また、90年代にはそれまで規制されてきた、いわゆる「ヘア・ヌード」の解禁の一翼を担い、10年には墓所でのヌード撮影に関して公然わいせつ罪等で略式起訴されるなど、写真表現に関する議論の的となる存在でもあった。