8月31日をもって閉館する東京・お台場の「森ビル デジタルアート ミュージアム:チームラボボーダレス」(以下、チームラボボーダレス)が、移転先を発表した。
「境界のない1つの世界の中で、さまよい、探索し、発見する」をコンセプトに、2018年6月にオープンした同館。初年度は約230万人の来館者を記録し、単一のアート・グループとして、世界でもっとも来館者が多い美術館としてギネス世界記録に認定されている。
新拠点は、2023年に都心部に竣工・開業予定の大規模な再開発計画「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の地下空間となる。新たなミュージアムは、既存のコンセプトを継承しつつ、最先端の技術を駆使することで展示作品を進化させ、「よりボーダレス」な鑑賞体験をつくりだすことを目指している。
8月24日に開催された記者説明会では、移転先の発表とともに「チームラボボーダレス」の過去4年間の実績を振り返った。
森ビル株式会社新領域企画部課長・杉山央は、同館は「東京から最先端の『アート』『文化』『テクノロジー』を広く世界に発信することで、東京に新たなデスティネーションをつくりだし、ひいては東京の都市の磁力を向上させる」という思いで開館したとし、初年度だけで世界の国数の8割に当たる160ヶ国以上からの来場者を記録したという。
また、初年度の来館者のうち約半数が訪日外国人であり、さらに同館が実施したアンケート調査によると、そのうちの約50パーセントが同館を目的として東京を訪問。同館開館前の2017年と19年を比較すると、最寄り駅の青海駅の利用者数は1.9倍になり、隣接する商業施設・パレットタウンの入館者数は約1.5倍上昇しているという。
「このミュージアムができたことによって、臨海エリアに従来とは異なる新たな客層を呼び込み、周辺エリアを含むエリア全体の回遊性を向上させ、近隣の駅や商業施設、ホテルなどの活性化に大きく貢献できたのではないかと考えている」(杉山)。
また、チームラボの工藤岳によると、開館以来、ジャスティン・ビーバーやブラッド・ピット、ウィル・スミス、キム・カーダシアン&カニエ・ウェスト、ヒュー・ジャックマン、ハリー・スタイルズなど世界中の著名人が来館したという。「著名人でも一般のお客さんでも、館内で写真や動画を撮って自分のソーシャルメディアにアップしてくれる。それを見たほかのお客さんがまた来てくれるという構造になっている。そういうことが相まってひとつの現象が起きたと思う」(工藤)。
新たなミュージアムの開館時期や展示作品、内部構成などの詳細はまだ非公表となっているが、同館を虎ノ門・麻布台プロジェクトに移転させることによってもたらされる効果について、杉山は次のような期待を寄せている。
「街側から考えると、文化芸術の要素を街づくりに入れることによってより豊かなライフスタイルをお客さんに提供できる。2023年にオープンする虎ノ門・麻布台プロジェクトのなかでも、今回の新たなミュージアムが集客の役割を果たすのではないかと思う。いっぽうでミュージアム側や利用者の視点について話すと、都心部に移転することによってよりアクセスしやすくなる。例えば、夜の時間でもお客さんに楽しんでいただきたい。また、近隣のお客さんに定期的に利用していただき、海外からのお客さんにも来ていただきたく思っている」。
なおチームラボボーダレスは、2019年に上海にオープンした分館に続き、今後はドイツ・ハンブルクやサウジアラビア・ジッダでもオープン予定。世界中に広げつつある境界のないアート体験、その今後にも注目したい。