今年3月、日本現代版画商協同組合(日版商)の元会員である画商が、平山郁夫、東山魁夷、片岡球子の3作家の版画作品10点の贋作を百貨店等で流通させていたことが発覚。9月27日、警視庁はこの件に関して元画商の男と、工房を営む版画作家を著作権法違反の疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、大阪・北区の画廊「かとう美術」の加藤雄三代表と、奈良・大和郡山市の「版画工房プレスアヘッド」を営む版画作家・北畑雅史。
本件は、贋作の存在を疑った日販商の複数会員が、2020年の春ごろより調査を開始。同年秋には贋作制作の証拠を入手し、加藤雄三も贋作の制作を認めた。これを受けて日販商は12月14日に加藤を除名処分としている。なお、加藤は日販商の専務理事を務めていた。
3月には日版商が、同組合理事長の青木康彦を代表とする「臨時偽作版画調査委員会」を設置した。委員会は該当するとされる作品の真贋鑑定を一般財団法人東美評価機構に依頼。さらに4月には「かとう美術」と加藤雄三代表に対する告発状を警視庁に提出していた。
ふたりの逮捕を受け、27日には青木が日販商の事務局で記者会見を実施。東美評価機構は疑いのある作品約260点をすでに鑑定しており、その約半数が贋作だったことがわかっているという。
また青木は、告発状提出以降、警察側でどのような捜査が行われたのかについては不明であり、ふたりの動機や贋作制作の背景についても把握していないとした。いっぽうで、今回の贋作流通は版画作品を扱う美術商に多大な影響を与えており、一日も早い状況の回復を目指すとも述べた。
なお調査委員会は、本件に関する声明を後日出す予定となっている。