2021.5.11

都と国で温度差。美術館は再開か休館継続か

3度目の緊急事態宣言が31日まで延長されるのを受け、都内の美術館は対応に追われている。国が運営する国立美術館は12日からの再開に踏み切るいっぽう、都立の美術館は休館を継続。同じエリア内でも判断がわかれた。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

休館中の東京都美術館

2021年5月11日追記:国立施設(東京国立近代美術館、国立新美術館、国立映画アーカイブ、東京国立博物館、国立科学博物館)については12日以降も休館継続となった。

 明確な効果を出せないまま、延長された3度目の緊急事態宣言。これを受け、美術館は対応に追われている。

 もっとも大きな違いは、休館を継続するか、再開するかだ。都立の美術館は休館を継続するいっぽう、国立館は再開へと踏み切る。都内でも分かれる対応には戸惑いの声も聞こえてくる。

 国が今回の宣言延長において定めた基本的対処方針では、1000平米以上の大規模施設は時短要請にとどまっており、これに準ずれば美術館なども開けることができる。ただそのいっぽうで東京都は美術館なども引き続き休業要請の対象としており、ダブルスタンダードの状態だ。 

 NHKによると、こうした状況を受け、東京都は文化庁に対し「休館を継続するよう書面で強く要請」したという。12日から再開するのは国立科学博物館、東京国立近代美術館、国立新美術館、国立映画アーカイブ、東京国立博物館。顕著なのは上野公園だ。同じ公園内にありながら、東京国立博物館と国立科学博物館は再開するが、100メートル程度しか離れていない東京都美術館は休館したままだ。

 文化庁は、国立劇場や新国立劇場などが制限付きで再開されるなか、都が要請する美術館・博物館の休館継続には「合理的な理由が示されていない」としている

ミュージアムは日常のなかにあるべき

 こうした都と国の判断が真っ二つになっている状況に対し、日本博物館協会専務理事の半田昌之は「残念な結果になった」と話す。

 「都と国、それぞれの判断はわかるし、時間がないなかでの対応であったことは理解できるが、本来であれば都と国の双方が協議してから現場に通達すべきだった。ミュージアムの再開が政治問題になることは避けるべき。ただでさえコロナ対策で多忙な現場が(再開/休館の)判断をしないといけない状況は、決して良いとは言えない」。

 この大型連休中、日本博物館協会のもとには美術館・博物館から再開すべきか休館継続すべきかの相談が寄せられていたという。そうしたなか、都立以外でも都の要請に従うかたちで休館継続を決めた館もある。

 「ミュージアムを利用される方々の立場から言えば、あちらは開館でこちらは休館というのは非常に不自由。いまの状態が致し方ないのであれば、きちんとフォローできるインフォメーションの工夫が必要だ」。

 昨年以来、コロナ禍に直面してきたミュージアムは経営的にも厳しい状況に立たされている。多くの美術館が事前予約制を導入し、コロナ以前規模の動員ができないまま、1年が経過した。そこにきての1ヶ月超の休館のダメージは小さくない。半田はこう続ける。

 「ミュージアムは経営的に厳しい状況が続いているが、その社会的意義の重要性を確認できた1年でもあった。どうしてもオープンできない館はオンラインを活用してきたが、やはり作品・資料があり、そこに来館者がいるというのがミュージアムの基本。社会的役割としても、ミュージアムは日常のなかにないといけない。人流抑制などは優先されるべきだが、休業要請するにしても根拠が必要だ。現場はガイドラインに従い対策してきたし、ミュージアムに起因するクラスターは発生していない。安全性は確保されていると言える。都も国も文化芸術は重視しているなか、現場が困らないようにコントロールしていただきたい」。

 今回の緊急事態宣言は31日までだが、これ以上長引くことはミュージアムに更なるダメージを与えることになる。都と国は、1本化された方針をもって文化芸術分野を支える義務があるだろう。

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