京都市立芸術大学が、男女の教員比率適正化を目指し、彫刻・版画・構想設計の3つの専攻において女性限定での教員公募をスタートさせた。
厚生労働省が定める男女共同参画社会基本法では、選考の段階で「男女の構成比を考慮して、男性(女性)の選考基準を女性(男性)よりも厳しくする」ことは違反とされているが、女性労働者の割合が全体の4割を下回るなど、男性労働者と比較して女性労働者が相当程度少ない状況にある場合は、事実上の格差を解決するポジティブ・アクションとして認められる。
現時点で、京都市立芸術大学(学部)の女性専任教員の割合は3割(端数切捨)。そのため、今回の採用ポリシーはポジティブ・アクションに該当するとし、女性限定での公募を進めている。
今回のポリシー採用に至った背景と今後の展望について、同大採用担当は「教職員における多様性を確保すべく、引き続き本件ポリシーに沿った採用を進めていきます」とコメント。「性別に関わる社会現象や人々の経験を積極的に読み解き、考察する力を涵養すべく、人間の社会や文化を構成する現象のひとつである性別=ジェンダーについての社会学的な視点を学ぶジェンダー論の講義を設けています」とジェンダーバランス是正に向けた積極的な姿勢を強調する。同大学生の約8割は女性であることから、女性教員比率の増員は教育面での重要性も高いだろう。
この取り組みについて、美術手帖で「統計データから見る日本美術界のジェンダーアンバランス」(2019年6月5日)を執筆した社会学者の竹田恵子はこう評価する。
「教員の多数が男性で学生の多数が女性であるという状態は、ステレオタイプの固定化につながり、またその押しつけが起こってしまう危険性があります。女性の学生にとってのロールモデルが少ないため、アスピレーション(自己実現のための熱意)の維持が難しく、さらに、ジェンダー構造に起因するハラスメントに対して脆弱になってしまう恐れがあります。したがって、京都市立大学の試みはポジティブな変化につながる可能性が大きいと考えています」。
そのいっぽう、「割り当てられた性が女性であるから必ずジェンダー意識が高いとは限らない」とも指摘する。「性別に限らず、ジェンダー/セクシュアリティ、そのほかダイバーシティをめぐる知識を持つ教員が増えることを願います」。
美術大学をめぐっては、一般大学と比べて女性入学者の割合が大きく、女性教員の割合が小さい傾向があり、今回の京都市立芸術大学のアクションは注目すべきものだ。他の美大にどのような影響を与えるのかも含め、注視したい。