千葉・佐倉市の国立歴史民俗博物館で、ジェンダーが日本社会の歴史のなかでどんな意味をもち、どう変化してきたのかを280点以上の資料を通して問う歴史展示「性差(ジェンダー)の日本史」が開催される。会期は10月6日〜12月6日。
同展は「古代社会の男女」「中世の政治空間と男女」「中世の家と宗教」「仕事とくらしのジェンダー ─中世から近世へ─」「分離から排除へ ─近世・近代の政治空間とジェンダーの変容─」「性の売買と社会」「仕事とくらしのジェンダー ─近代から現代へ─」の7章構成。
同展ではまず、政治が行われる空間に着目し、「男女」の区分の始まりを考える。古代律令国家の形成とともに、人々を「男」と「女」に二分して異なる役割を定める社会がかたちづくられた。さらに中世・近世を経て、政治の場から女性を排除する近代国家が確立し現代に至る過程を資料とともに探る。
さらに、仕事や暮らしのなかの男女にも光が当てられる。古代の男女の労働実態を物語る木簡や、古墳から出土する埴輪、中世や近世の田植えの様子や様々な職人たちの姿から、男の職業、女の職業というイメージがいつ、どのように生まれたのかを浮かび上がらせる。
加えて、それぞれの時代の社会の特徴とジェンダーに大きく左右される性の歴史を、中世から戦後までの性の売買に注目して紹介。頻繁に語られてきた「売春は最古の女性の職業」が事実かどうかなどを問いながら、遊女として生きた女性たちの日記や手紙などを紹介しつつ、男女の区分や位置づけを深く反映する性の歴史をたどっていく。
同展では、古代社会の労働における性差を知る資料として、甲塚古墳から出土した重要文化財の機織型埴輪2体のうちの1体と、機を織る女性坐像の3D画像を公開。
また、遊女文化を物語る作品として、新吉原遊廓の遊女・小稲を描いた高橋由一《美人(花魁)》(1872)を、近代の女性の労働実態を知る資料として筑豊の炭鉱の労働者を描いた山本作兵衛の炭鉱記録画を展示する。
無意識のうちに人々がとらわれているジェンダーの歴史をひもとくことで、現代の性差について考える手がかりとなりそうな展覧会だ。