新型コロナウイルスの蔓延により、美術館・博物館やギャラリーは閉鎖を余儀なくされ、アートフェアや芸術祭は相次ぎ中止・延期。そんななか、アーティストたちは作品の委託制作が中止されるなど、危機的状況に陥っている。
こうした状況下、ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーのアーティスティック・ディレクターであるハンス・ウルリッヒ・オブリストが、文化機関を支援し次世代のアーティストを生みだすために、数百万ポンド(約数億円)規模のパブリック・アート・プロジェクトを呼びかけている。
イギリスの「ガーディアン」によると、オブリストはこのプロジェクトを1930年代の世界恐慌の際にアメリカ雇用促進局のプロジェクトとして行われた「連邦美術計画」と比較。「(連邦美術計画で)アーティストたちは地域社会に出ていった。ニューディール時代には、彼らは給料をもらい、研究したり作品をつくったりすることができた。多くの人には最初の仕事とコミッションが与えられた」と説明している。
当時、これらのプロジェクトでは、3700人以上のアーティストが雇用され、1万5000点以上の作品が生みだされた。ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコも、それをきっかけにキャリアをスタートさせている。
オブリストは「イギリス政府はこのようなことをすべきだ」とし、新型コロナウイルスの大流行が収まれば、今回のプロジェクトはイギリスの芸術創造の活性化に役立つだろうとしている。「危機的状況にあるいま、美術館はどのようにして壁を越え、すべての人にリーチできるかを考えることが重要だ」。
先週、イギリスのアーツ・カウンシル・イングランド(ACE)は、アートや博物館、図書館など文化と芸術に関与している個人や組織に1億6000万ポンド(約212億円)の緊急資金を提供することを発表。その資金は、パブリック・アートにも使われるのか否か、注目したい。