過去2年間に開催された西洋美術に関する展覧会などのなかから、日本における西洋美術の理解と文化交流の促進、西洋美術研究発展のため、顕著な業績があると認められる個人・団体に贈られる「西洋美術振興財団賞」。今年、第14回となるこの賞の受賞者が決定した。
学術賞を受賞したのは、関昭郎(東京都庭園美術館事業企画係長[当時]、現・東京都写真美術館事業企画課 事業第一係長)と村上博哉(国立西洋美術館 副館長兼学芸課長)の2名。
関昭郎は、東京都庭園美術館で「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」を担当。両次大戦間のフランスに花開いたアール・デコにおいて、非ヨーロッパ圏の美術や文化、異境へのまなざしがいかにして影響を及ぼし、変容させていったかを明らかにしたこと、植民地主義と美術というテーマに挑んだ論文(図録に収録)などが評価された。
村上博哉は、ル・コルビュジエが関わった芸術運動「ピュリスム」を回顧する、日本では初めての本格的な展覧会「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」における、絵画から建築へ、2次元から3次元へ、困難な展開を再検証しようとした意欲的な試みを評価。また、ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館を生かした展示の企画、実現、カタログの編集を中心的にになったことも顕彰された。
そして、文化振興賞は凸版印刷株式会社が受賞。2018年開催の「天文学と印刷 新たな世界像を求めて」展(印刷博物館)や、東京国立博物館内に設立したミュージアムシアターなど、継続的に行ってきた高レベルのメセナ活動が評価された。
審査員は大髙保二郎(早稲田大学名誉教授)、笠原美智子(公益財団法人石橋財団 ブリヂストン美術館副館長)、建畠晢(多摩美術大学学長)、松葉一清(武蔵野美術大学教授)、三浦篤(東京大学[大学院総合文化研究科]教授)の5名。