普遍的人権などのテーマに関心を抱く中国人アーティスト、アイ・ウェイウェイが、現在中国とカナダの間でますます高まっている政治的対立に対し、カナダ・トロントのガーディナー博物館を通じて声明を発表した。
2018年12月1日、カナダ政府は、アメリカの要請によってバンクーバーで中国の大手通信機器メーカー・ファーウェイのCFO・孟晚舟(モウバンシュウ)を逮捕した。その後、中国政府は2人のカナダ人を国家安全保障上の理由で拘束したほか、麻薬密輸で有罪判決を受けたカナダ人男性の再審を命じ、死刑を宣告するなど、激しい応酬が生じている。
アイはまず、今回の声明の中で中国政府の強制拘禁や一党独裁体制に対し、次のように批判する。「中国国内では、正当なプロセスなき失踪や強制拘禁が一般的で、そうでないケースがあるとしたら私は驚きます。中国には独立した司法制度や明確な法律がなく、党の利益に基づいた法律の解釈があるのみ。中国は法によって支配される国ではなく、党によって支配される国なのです」。
いっぽう西欧諸国に対しては、「中国の問題に気づかないふりをし、むしろ狡猾に喜びながらパートナーシップを結んでいます」と指摘している。
「現在、西欧諸国が中国の状況と対立しているのは、中国で怪物のような政権が生まれていることに対する自分たちの共犯性を認めたくないからでしょう」。アイは、現在の状況下で中国は非常に良い結果を出してきたとしつつ、「本当の問題は、ヴィジョンや責任が完全に欠如し、現状から利益を得ることにしか関心がない西欧諸国だと考えています」。
なお、アイの陶磁器を中心とした個展「Ai Weiwei: Unbroken」は、2月28日にガーディナー博物館でスタートする。陶芸作品を通じ、難民や言論の自由、反対意見の弾圧などのテーマを探求する本展は、中国とカナダの間の政治的対立に影響をもたらしそうだ。
声明の全文:
中国政府の最近の行動は意外なものではありません。なぜなら過去70年間、彼らは自分たちのやり方、イデオロギーと慣習で行動してきたからです。 中国国内では、正当なプロセスなき失踪や強制拘禁が一般的で、そうでないケースがあるとしたら私は驚きます。中国には独立した司法制度や明確な法律がなく、党の利益に基づいた法律の解釈があるのみ。中国は法によって支配される国ではなく、党によって支配される国なのです。 現在、中国はアメリカ合衆国に次ぐ世界2番目の経済大国です。中国は急速に発展してきたいっぽうで、西欧諸国は中国の労働問題や環境被害、汚職といった基本的権利の搾取を通じて、大きな恩恵を受けています。 西欧諸国は中国の問題に気づかないふりをし、むしろ狡猾に喜びながらパートナーシップを結んでいます。彼らは中国の台頭の背後に隠れる力なのです。そして中国はさらにいっそう強力な国になり、その権威主義的傾向を保ち続けています。 西欧諸国でしばしば繰り返される議論は、「抑圧的な国々に力強い経済成長がもたらされた場合、人権や民主主義の受け入れも必然的にもたらされるのではないか」ということです。しかし、独裁政権の歴史を理解すれば、この説に可能性がないことは自明です。歴史上、独裁者が自発的に権力や統制を放棄したことはなく、革命や大損害をもたらす出来事によって変化は突然起こるのです。人権や民主主義の受け入れがじょじょに行われることはないということを、じつは西欧諸国はよく理解しています。 中国は、西欧諸国にとって「完璧な夢」だったのです。グローバリゼーションの旗印のもと、中国は西欧諸国ができなかったことをすべて行い、西欧諸国の今日的な民主主義国家のあり方を手助けしてきたからです。現在、西欧諸国が中国の状況と対立しているのは、中国で怪物のような政権が生まれていることに対する自分たちの共犯性を認めたくないからでしょう。 結局、何も変わりません。中国はいわゆる普遍的価値を完全に無視します。一党制の管理下にあり、国民が投票権を持たなければ、社会に対する責任や信頼は生まれません。独立した報道機関やメディアも存在しません。では、中国に何が期待できますか? 私は、現在の状況下で中国は非常に良い結果を出してきたと思います。そして本当の問題は、ヴィジョンや責任が完全に欠如し、現状から利益を得ることにしか関心がない西欧諸国だと考えています。