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2018.5.7

人類学と美術表現の多様な交点。
リニューアルした『美術手帖』6月号は「アートと人類学」特集

リニューアル第1号となる5月7日発売の『美術手帖』6月号の特集は、世界と人間の営みを探究してきた人類学と、美術表現の多様な交点を探る「アートと人類学」特集。フィールドワークによる作品から研究機関でのプロジェクトまで、実践の数々を取り上げるほか、五木田智央による特別付録も。

『美術手帖』2018年6月号より
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 創刊70周年を迎えた雑誌『美術手帖』は、5月7日発売の2018年6月号から、隔月発行に移行し、電子版の販売も開始。リニューアル第1号となる6月号は、「アートと人類学」を特集する。

 人間存在にまつわるあらゆる事象について探究する学問、人類学。観察参与という手法や、体験に重きを置くその思考方法は、ときにアーティストたちにも影響を与えてきた。そして人類学もまた、美術の手法に学び、表現の営みについて考察してきた歴史を持つ。本特集では、フィールドワークによる作品から研究機関でのプロジェクトまで、美術と人類学のクロスポイントにある実践の数々を取り上げる。

『美術手帖』2018年6月号より

 巻頭座談会では、写真家・映像人類学者で「あいちトリエンナーレ2016」の芸術監督を務めた港千尋、世界中の教会の献金箱や、戦時中に製造された陶器製手榴弾などについてのリサーチを行い、作品を制作してきたアーティストの笠原恵実子、映像人類学者としてアーティストとの協働も積極的に行う川瀬慈が、「イメージ」の扱い方をテーマに、それぞれ異なる立場から語り合った。

『美術手帖』2018年6月号より

 Part1では、人類学的思想と交差するアーティストやキュレーターの実践を紹介。アーティストの下道基行が、フィールドワークにより制作された「torii」や「戦争のかたち」シリーズの制作プロセスを語るインタビューのほか、ともに狩猟をテーマとする人類学者の山口未花子とアーティストの井上亜美、人類学の分野でも活動する若手キュレーターの上妻世海が登場。また、「人類学的思考」をもとに制作を行う国内外の作家解説や、1989年の「大地の魔術師たち」展に始まる、キュレーターたちの実践を振り返る企画も。

『美術手帖』2018年6月号より

 Part2では、学術研究の領域での、人類学者たちのアートとの協働にフォーカス。人類学の重要人物や基本概念をイラストを交えて紹介する「基礎知識」コーナーに始まり、人類学博物館が先住民アーティストを支援するバンクーバーの研究シーンや、映画『リヴァイアサン』などで知られる注目の人類学者兼映像作家、ルシアン・キャスティン=テイラー&ヴェレナ・パラヴェルの貴重なロングインタビューを掲載。また、イメージやサウンドを扱い、民族誌映画の制作も行われる「映像人類学」の分野について、領域横断的な手法が次々と生み出される最新の状況をトピックごとにたどり、美術と人類学が交差する現場を紹介する。

『美術手帖』2018年6月号より

 さらに、美術作品やアートシーンを研究対象とする人類学者によるコラムや、アートと人類学の関わりを包括的に論じる、石倉敏明による論考なども掲載する。

 アートと人類学の協働は、人間と世界、表現についての大きな問いに挑む試みであるいっぽうで、そこには自ら体験することの意味や、他者をどうとらえ、どう語るかという、普遍的な問題意識がある。学術研究とアートのクロスポイントを紹介しながら、誰もの日常につながりうる観点を提示する内容となっている。

『美術手帖』2018年6月号特別付録は画家・五木田智央によるZINE

 特別付録は画家の五木田智央によるZINE。五木田が制作のインスピレーション源としているスクラップブックをもとにしたコラージュと、五木田と親交が深い写真家・塩田正幸による、開催中の「PEEKABOO」展制作風景のドキュメントスナップで構成された別冊となっている。作品集としても楽しめる、ここでしか手に入らない1冊だ。