編集者として働いていた尾形アツシは1996年に脱サラし、愛知県立窯業高等技術専門学校で陶芸を学んだ。卒業後は愛知県瀬戸市で制作を始め、現在は工房を奈良に移し活動。登り窯で土ものを中心に作品制作を行い、土の質感や表情を出すために釉薬をかけず焼成した焼き締め作品や、刷毛目や粉引きを多用した土化粧の作品を多く制作している。
本展は、2012年12月に中野のOz zingaroで開催された個展「大きな壺といつものうつわ」展の流れを汲むもの。尾形の制作の基本であるうつわ1000点ほどに加え、大壺を数十点、またさらなる限界に挑戦した高さ2mにも及ぶ超巨大壺5点を展示する。
巨大壺制作のなかで、尾形は割れやクラック、また土の存在感の残るようなうつわに惹かれることに気づき、うつわづくりにおいて少し「綻び」があることが自らのスタイルであると再認識したという。素材を最大限に引き立たせる大きさやかたちの重要性に立ち返り、うつわ制作を基本としながら他のものに着目する姿勢で超巨大壺を完成させた。新たな挑戦により見つめ直された尾形作品の真髄と進化に注目したい。