ヴィクター・マンは1974年ルーマニア、クルージュ市生まれの作家で、現在はクルージュとベルリンを拠点に活動。伝統的な絵画様式を踏襲しつつ、現代的なアプローチで描く。ルネサンスや近世からの引用や反復されるモチーフによる積層的なその表現は鑑賞者の視線を引きつける。
多数の美術館で個展を開くほか、「ヴェネチア・ビエンナーレ2007」ルーマニア館代表を務め、「釜山ビエンナーレ2008」、「ラ・トリエンナーレ2012」(パリ)、「ヴェネチア・ビエンナーレ2015」出展。その作品はパリのポンピドゥ・センターなど数々の美術館にコレクションとして所蔵されている。2014年には、ドイツ銀行による「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に選出された。
ドイツ・ファステンバーグ現代美術館での展示に続き行われる本展はヴィクター・マンの日本初の展覧会開催となる。
本展に出品されるのは「Self-Portrait at Father's Death」や「Self with Father」といった作品タイトルから見られるように作家個人を出発点とした私的な絵画群となっている。しかし、それらはまるでカラーフィルターを通して覗き込んだような色彩と、各モチーフが融合と分離を繰り返す複雑な構成によって、ある種の不自然さをかもし出す。そして個人を出発点にしながらも、生と死のサイクルといった象徴的で隠喩的な世界観へと誘う。