視覚と認識・メディア・そして現代へ
思索的な表現が重視された1970年代。事物の存在と認識のズレといった哲学的な問いに取り組んだ女性の作家にも注目したい。第7章「1970s – 1980s 視覚と認識をめぐって」では、写真や版画、彫刻などの技法を通して、視覚と認識、二次元と三次元の関係を探るなど、作家のジェンダーを意識させない多様な実践をたどる。
男女雇用機会均等法が成立するなど、女性の社会進出が進み、大学進学率も上がった1980年代。この頃、若い女性の美術家が次々と登場し、メディアでも取り上げられるようになる。しかし、繁栄した雑誌文化は、彼女たちを持ち上げると同時に消費する傾向もあった。第8章「1980s – 2000s 女性の社会進出とメディアとの攻防」では、この時代を生きた前本彰子(1957〜)や吉澤美香(1959〜)、そして90年代以降の長島有里枝(1973〜)らの活動を取り上げる。

第9章「2000s – 2010s 私的な宇宙と揺らぐ足元」で焦点となるのは、1995年の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件、そして2001年のアメリカ同時多発テロ事件など、世紀末から新世紀にかけての終末感とそれを受けた作家らの繊細な表現だ。またこの時代は、現代美術家・村上隆によって提唱された芸術運動「スーパーフラット」の影響もあり、マンガやアニメと美術の境界も緩やかになっていった。しかし、こうした時代の気分は2011年の東日本大震災により一変することとなる。
最終章の「2010s – 2020s 身体と『女性の美術家』からの解放」では、2010年代後半に起こった「#MeToo運動」から、20年代に世界的流行を見せた新型コロナウイルスの影響までを取り上げる。ジェンダー平等や健康やケアへの意識が高まった今日までの状況とその視点を交えながら、これからの生のあり方を問いかける作品を紹介する。




















