青森市の国際芸術センター青森(ACAC)で、2ヶ年にわたるプログラム「ランド&ラーニング たとえ共存が難しかったとしても、この森は共有地になりうるだろうか」が始動した。期間は2028年3月まで。
気候変動や人間の暮らし、開発の影響により、野生動物が人の生活圏に現れる機会が近年増えてきている。八甲田山麓に位置する同館の周辺地域でも、熊をはじめとする野生動物の出没が相次いでおり、人間の暮らしと自然との関係が改めて問われる状況となった。
人間社会の制度のもとでは、同館が位置する森(土地)は人間の管理下にあるとみなされる。しかし、人間が森を利用して境界を引き、安全を確保しようとするいっぽうで、動植物もまたそれぞれの営みのなかでこの土地に関わり続けている。そこには、人間だけの論理では捉えきれない複雑な関係が存在している。
4つのプログラムで構成される「ランド&ラーニング」
こうした状況に応答するように立ち上げられた「ランド&ラーニング」は、同館が位置する森を、自然の摂理のなかで多様な種が行き交う「共有地」と捉えることから出発するプログラムだ。2年にわたる期間を通じて、他種と森を分かちあい、ともにあるための方法を、ラーニングプログラムや展覧会など様々なかたちで探究していく。
今年度は「たとえ共存が難しかったとしても、この森は共有地になりうるだろうか」を副題に掲げ、フィールドワークやワークショップ、トークイベントなどを通して、知識と実践の両面から学ぶ場を目指す。人間と他種との関係性によって絶えず変化する「共有地」の状況に合わせ、プログラム自体もその時々の状況に応答しながら柔軟に展開される予定だ。
本プログラムは多様な視点から森と土地のあり方を見つめ直すため、4つのプロジェクトによって構成されている 。


「八甲田縄文ラボ」では、アーティストや研究者とともに八甲田山系とその暮らしを学び、自然環境や生活の特徴を手がかりに他種が集う「共有地」のあり方を考える。9月には、地理学者の三浦英樹や人類学・解剖学者の長岡朋人、アーティストの菅原果歩らを迎えたバスツアーやワークショップが予定されている。

また、同館の森に設置されてきた野外彫刻のあり方を「残る、なくなる」という視点からアーティストとの対話を通して捉え直すのが、「残る、なくなる」プロジェクトである。これまでに屋外作品を手がけてきた彫刻家の土屋公雄や美術家の辻けい、長岡朋人を迎え、野外彫刻のこれからのあり方を考えるトークイベントを開催する。また、2027年3月以降には、同館の野外作品を手がけてきたアーティストの淺井裕介とともに、作品の修復を行う参加型のワークショップを予定している。


「地と表現の岸辺」では、青森の地質学的に特徴のある土地やその場所に根付く歴史、伝承をリサーチし、生物や無生物の間にある物語を探る。本プロジェクトでは写真家・小説家の清水裕貴を招き、青森でのリサーチ先で採集したものを同館屋外に設置・公開するオープンラボや、地酒を囲みながら話すトークイベントが開催される。

最後に「つくるをひらく」では、アーティストと市民の共同制作を通じて地域コミュニティと関わりあいながら行う作品制作の可能性を模索する。今回は台湾を拠点に活動する演出家・ビジュアルアーティストの李奥森(ヴァル・リー)が、地元のブラインドサッカーチーム「ガルハ青森」との協働リサーチをもとに、観客参加型のパフォーマンス公演《Voy!》を発表する。



























