今週末に見たい展覧会ベスト7。ポーラ ミュージアム アネックスのマティス展から落合陽一の個展、ソール・ライターまで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「Saul Leiter」展示風景より

もうすぐ閉幕

マティス ― 色彩を奏でる(ポーラ ミュージアム アネックス

展示風景より、アンリ・マティス《リュート》(1943)

 今年が没後70年にあたるアンリ・マティス(1869〜1954)。その作品を無料公開する展覧会「マティス ― 色彩を奏でる」が、東京・銀座一丁目にあるポーラ ミュージアム アネックスで始まった。会期は10月27日まで。レポートはこちら

 アンリ・マティスは20世紀を代表する画家のひとり。フランス北部に生まれ、パリへ出て美術学校などで学んだ後、1905年のサロン・ドートンヌに原色を多用した荒々しい筆致による作品を出品。「フォーヴ」(野獣)の画家と評された。1917年以降は制作の拠点をニースへと移し、地中海の明るい光のもと、あざやかな色彩によって室内の女性像を数多く制作。晩年には、戦争や自身の病といった困難のなか、「切り紙絵」の手法を採り入れて意欲的に作品を制作し、挿絵本『ジャズ』やロザリオ礼拝堂の装飾プログラムなど、精力的な活動を見せた。日本ではここ2年で「マティス展」(東京都美術館、2023)、「マティス 自由なフォルム」展(国立新美術館、2024)が開催され、大きな注目を集めたことはい記憶に新しい。

 本展は、ポーラ ミュージアム アネックスが入るポーラ銀座ビルの15周年を記念するもの。ポーラ美術館所蔵のマティス作品が銀座に集結した。

会期:2024年10月4日〜27日
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
開館時間:11:00〜19:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:なし
料金:無料

KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2024(ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTOほか)

 2010年より京都市内を舞台に開催されている「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」。その第15回が10月27日まで開催されている。

 「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、芸術表現と社会を新しいかたちの対話でつなぐことを目指して開催されてきた同芸術祭。今年は、国内外の先鋭的なアーティストを迎え、いま注目すべき舞台作品を紹介するとともに、先駆的な芸術表現の創造の場として、舞台芸術の可能性に挑戦する新作やリ・クリエーション作品も多数上演されている。

会期:2024年10月5日〜27日
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTOほか

落合陽一「昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン」(BAG-Brillia Art Gallery-)

メインヴィジュアル

 落合陽一による個展「昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン」も、京橋のBAG-Brillia Art Gallery-で10月27日まで開催中だ。

 本展は、江戸時代の宗教的空間を考察し、落合が長年追求してきたデジタルネイチャー・計算機自然という哲学体系を基盤に時間と空間の循環的な性質を探求する展覧会となっている。展示の中心となるのは、江戸文化の現代的解釈による彫刻作品「鰻ドラゴン」と前年の作品「オブジェクト指向菩薩」や一昨年の作品「ヌル即是色色即是ヌル」から発展したヌルの御神体「一仏五鮎八鰻三角縁仏獣鏡」など。これらの作品は、落合の芸術における「ヌル」(*)の概念を体現しているという。

*──計算機科学におけるnull概念を指し、仏教でいうところの「空」を表現している。

会期:2024年9月7日〜10月27日
会場:BAG-Brillia Art Gallery-
住所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル
開館時間:11:00〜19:00 
休館日:月(ただし、祝日の場合は翌日)
料金:無料

藤嶋咲子 個展「WRONG HERO」(9s Gallery by TRiCERA)

藤嶋咲子 WRONG HERO(開発中のイメージ)

 東京・西麻布の9s Galleryで、現代アーティスト・藤嶋咲子による個展「WRONG HERO」が10月27日まで開催されている。

 藤嶋は、アナログとデジタル、2Dと3D、現実と仮想現実とを行き来しながら実験的な作品を制作するアーティストだ。活動初期は配管や工場をモチーフに、密なパターンを“勝手な秩序”でカラフルに表現した作品群を発表。近年は、COVID-19によるロックダウン時に発表した、SNS上で参加者を募りバーチャル空間でデモを実施する作品をきっかけに、SNSに流れる「個人の声」を掬い上げる作品群を制作した。

 本展では、そんな藤嶋による新作《WRONG HERO》が発表されている。タイムラインにテキストとして埋没していく「個人の声」を、テキストだけではないかたちで体験できるようにというコンセプトから、ビデオゲーム形式の作品を出展。ビデオゲームの特性とも言える「他者を演じる」「没入する」といった体験を通じて、社会的な問題に対する新たな視点を提示するものとなる。

会期:2024年10月19日〜27日
会場:9s Gallery by TRiCERA
住所:東京都港区西麻布4-2-4 The Wall 3F
開館時間:12:00〜19:00
休館日:10月21日 
料金:無料

今週開幕

LIZZIE FITCH / RYAN TRECARTIN: IT WAIVES BACK(プラダ 青山店 6階)

Ryan Trecartin Stills from Waives Back (Whether Line) 2019-2024 4K 60fps color video with stereo audio Courtesy the artist

 プラダ財団の支援のもと、「Lizzie Fitch / Ryan Trecartin: It Waives Back」展がプラダ 青山店で開催されている。会期は2025年1月13日まで。

 本展は、アメリカのアーティスト、リジー・フィッチとライアン・トレカーティンによる日本初の個展だ。 ともにオハイオ州アセンズを生活・活動の拠点としており、2000年にロードアイランド・スクール・オブ・ デザインで出会って以来、共同で活動。ノンリニア映像と没入型インスタレーションを融合するコラボレーション活動で高い評価を得ており、作品はこれまでホイットニー美術館やMoMA PS1、パリ市立近代美術館、ヴェネチア・ビエンナーレ、クンストヴェルケ現代美術センター、アストラップ・ファーンリー美術館、プラダ財団で展示されてきた。

 会場は、大型のインスタレーション1作品、映画2作品(『TITLE WAIVE』『Waives Back (Whether Line)』)、そして数々の独立した彫刻のシリーズで構成されている。 

会期:2024年10月24日~2025年1月13日
会場:プラダ 青山店 6階
住所:東京都港区南青山5-2-6
開館時間:11:00~20:00
休館日:プラダ 青山店に準ずる
料金:無料

Saul Leiter(art cruise gallery by Baycrew's)

展示風景より

 日本で高い人気を博す写真家ソール・ライター(1923〜2013)。その個展が、ベイクルーズが運営するアートギャラリー「art cruise gallery by Baycrew’s」(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー)でスタートした。会期は2025年1月13日まで。レポートはこちら

 ソール・ライターは、50〜80年代のニューヨークでファッション誌を中心に活躍した写真家。その後は商業写真の世界から退き、世間から姿を消していたが、2006年にドイツ・シュタイデル社から写真集が出版されたことを機に再評価され、相次ぐ展覧会開催や写真集の刊行、さらに12年にはドキュメンタリー映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』が公開された。 

 2017年20年、Bunkamura ザ・ミュージアムで2回にわたって回顧展が開催され、23年にも「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」が開催されたライター。本展では、没後に発掘されたポジをソール・ライター財団監修のもと、新たにプリントされた作品44点が日本で初公開されている。

会期:2024年10月25日〜2025年1月13日
会場:art cruise gallery by Baycrew's
住所:東京都港区虎ノ門2-6-3 虎ノ門ヒルズ ステーションタワ ー3F SELECT by BAYCREW’S 内
開館時間:SELECT by BAYCREW’Sに準ずる 
休館日:SELECT by BAYCREW’Sに準ずる
料金:無料

アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング(京都dddギャラリー)

POSTER Design: vista(Katharina Sussek & Jens Müller)

 京都dddギャラリーで「アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング」がスタートした。会期は2025年1月13日まで。

 20世紀初め、ペーター・ベーレンスをはじめとするドイツのデザイナーたちは、のちにコーポレート・デザインとして知られることになる例を世界で初めて制作。それにつづくバウハウスも、システマティックなデザイン手法をカリキュラムに含めた。第二次世界大戦の終戦から数年後、西ドイツは、それまで切り開いてきたデザインの原則を再びたどり、デザイン教育機関として強い影響力を持っていたウルム造形大学や、多くの若いグラフィックデザイナーたちによって、1960年代初頭にはシステマティックなデザインの新たな解釈が生み出された。

 本展では、コーポレート・デザインの代表的なポスターやビジュアル・アイデンティティの使用例、企業などの独自のコンセプトが示された貴重なデザイン・マニュアルなどを紹介。コンセプト・スケッチや印刷サンプルといった貴重な一次資料を通して、手作業で仕上げられたデザインを展示する。

会期:2024年10月24日〜2025年1月13日
会場:京都dddギャラリー
住所:京都府京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F
電話番号:075-585-5370 
開館時間:11:00〜19:00(土日祝は〜18:00) 
休館日:月(祝日・振替休日の場合はその翌日)、祝日の翌日(土日にあたる場合は開館)
料金:無料

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