京都・東山の両足院で、エリザベス・ペイトンの新作個展「エリザベス・ペイトン:daystar 白露」がスタートした。会期は9月24日まで。
ペイトンは、米国出身の画家で、現在はニューヨークとパリを拠点に活動。93年にチェルシー・ホテルの一室で肖像画を展示したことが話題を呼び、「ニュー・フィギュラティヴ・ペインティング(新具象派)」の画家としても知られている。
会場となる両足院は臨済宗の寺院。毎年開催されているKYOTOGRAPHIEの会場のひとつであるほか、ハロルド・アンカートの個展「Bird Time」(2023)など、サイトスペシフィックな展覧会が数多く開催されている。
本展は、2017年に原美術館で開催された「エリザベス ペイトン:Still life 静|生」展以来、ペイトンにとって日本では約7年ぶりの個展だ。2024年1月、ペイトンは京都で個展会場を探していた際に、候補のひとつであった両足院に打診。実際に現地に訪れ、副住職・伊藤東凌との対話を重ねた末に個展の開催が実現したのだという。
今回見どころのひとつとなっているのは、広間に描かれたペイトンによる襖絵と床の間の掛け軸だ。座敷の空間に差し込む自然光や、それに応じて生み出される影の空間に溶け込むかのように佇むこれらの作品は、両足院の持つ歴史・文化に調和するように描かれ、設られている。
また、作品の展示方法からも空間との調和を目指したことが伺える。代々両足院やその所有物を管理してきたという伊藤の話を受け、作品を設置する什器には寺の古材が、ドローイングのフレームには木製のつづらが、そして掛け軸の表装には伊藤の祖父が法要で身につけていたという法衣の一部が再利用されている。
このように日本における宗教空間への敬意を払いながらも、ペイトンは個展の準備期間に読んでいたという米国の思想家ラルフ・ワルド・エマソンの『自然論』をもとに、自身の問いについて反芻する。
「なぜ我々も世界と独自の関わりをもってはいけないというのか?」
「なぜ我々には、伝統ではなく自己洞察にもとづく詩や哲学が、我々への啓示にもとづく宗教が、故人の歴史でないものが、あってはいけないというのか」
「わたしたち自身の神々を新たにつくってもいいのではないか…?」
(会場にて配布されたリーフレットより一部抜粋)
空間に点在する肖像画の数々。それら一つひとつ(一人ひとり)にも、ペイトンならではの哲学が流れていることが感じられるだろう。
なお、両足院の茶室・臨池亭では、展示にちなんだ呈茶席や茶会も設けられている。参加をご希望の場合は、両足院公式ウェブサイトの予約ページを確認してほしい。