今週末に見たい展覧会ベスト14。カルダー、神護寺、エリザベス・ペイトンに春画まで【4/4ページ】

「黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」(東京藝術大学大学美術館)

 東京藝術大学大学美術館で「黄土水とその時代―台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」が開催される。

 台湾出身者初の東京美術学校留学生として知られる彫刻家・黄土水(1895〜1930)。本国では2023年に代表作《甘露水》(1919)が国宝に指定された。本展では、国立台湾美術館からこの《甘露水》を含む黄土水の作品10点と資料類を展示するとともに、藝大コレクションより黄が美校で学んでいた大正から昭和初期の時期を中心とした洋画や彫刻の作品48点をあわせて紹介する。

 日本の伝統的感性と近代美術との融合をめざした黄土水の師・高村光雲とその息子光太郎、《甘露水》にも通じる静かな情念をたたえた荻原守衛や北村西望の人物像、あるいは藤島武二、小絲源太郎らが手がけた20世紀初頭の都市生活をモチーフとした絵画、台湾出身の東京美術学校卒業生の自画像作品など、バラエティに富んだ作品群を展示する。

会期:2024年9月6日~10月20日
会場:東京藝術大学大学美術館住所東京都台東区上野公園12-8
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、9月16日、9月23日、10月14日は開館)、9月17日、9月24日、10月15日
観覧料:一般 900円 / 大学生 450円 / 高校生および18歳以下、障がい者手帳をお持ちの方とその介護者1名 無料

特別展 心象工芸展(国立工芸館)

 石川・金沢の国立工芸館で、特別展「心象工芸展」が開催される。工芸は素材に対する深い理解とそれに伴う技術で表現されているので「何が表現されているのか」といったことよりも「どのようにこの作品が制作されているのか」といった点に注目が集まりやすい。しかし実際には多くの工芸家が自身の心象や社会とのかかわりといったモチーフにも重点を置いて制作している。

 本展では、現代の表現を提示する6名の作家の作品を展示。刺繍の沖潤子は生命の痕跡を刻み込む作業として布に針目を重ねた作品を、ガラスの佐々木類は土地と自然の記憶を留める作品を、鋳金の髙橋賢悟は現代における「死生観」と「再生」をテーマにした作品を制作している。

 また、彫金の人間国宝である中川衛は世界各国の風景を抽象模様化した作品を、漆芸の中田真裕は心奪われた一瞬の光景を共有するための作品を、陶芸の松永圭太は自身の原風景と時間を留める地層を重ねモチーフにして作品を制作。本展覧会では、工芸家それぞれの技術だけでなく、いまを生きる作家の心の表現に注目する。

会期:2024年9月6日~12月1日
会場:国立工芸館
住所:石川県金沢市出羽町3-2
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、9月16日、9月23日、10月14日、11月4日は開館)、9月17日、9月24日、10月15日、11月5日
観覧料:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生 500円 / 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方と付添者1名 無料

「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」(細見美術館)

喜多川歌麿 夏夜のたのしみ(部分) 個人蔵 通期展示

 京都の細見美術館で「美しい春画-北斎・歌麿、交歓の競艶-」が開催される。春画は、一般に、人間の性愛を描いた絵画の総称で、男女の姿がおおらかに、ときにユーモアをもって描かれている。江戸時代には「笑い絵」とも呼ばれ、浮世絵の普及とともに、大名から庶民まで貴賤を問わず、男女対等に楽しまれた。また、春画は縁起物でもあり、嫁入り道具として母から娘や嫁に受け継がれていた。

 しかし、明治時代以降、西洋的倫理観の流入にともない、春画はタブーとみなされ、秘すべきものとされるようになるも、2013~14年、ロンドンの大英博物館で「春画 日本美術の性とたのしみ(Shunga sex and pleasure in Japanese art)」が開催され、春画の高い芸術性とユーモラスな発想が海外で高く評価される。そして、2015~16年には、日本では初めてとなる本格的な「春画」展が永青文庫(東京・目白)と細見美術館(京都・岡崎)で開催され、大きな注目を集めた。これを契機に春画をめぐる環境は大きく変化し、多くの一般の方々の関心が高まり、浮世絵研究においても春画は特殊なジャンルではなく、絵師の作画活動のひとつとしてとらえられるようになった。

 本展では、版画・版本の作品に加え、とくに「肉筆春画」に焦点をあて、書籍などに掲載され、存在は知られながらも、美術館での展示が叶わなかった作品を紹介。日本の美術館では初公開となる葛飾北斎の幻の名品「肉筆浪千鳥」や、喜多川歌麿の大作、さらには海外から里帰りを果たした作品を含む、精選された美麗な春画 約70件を展示する。

会期[前期]:2024年9月7日~10月14日、[後期]2024年10月16日~11月24日
会場:細見美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
電話:075-752-5555
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火)
観覧料:2200円(18歳未満は入場禁止)

「Nerhol 水平線を捲る」(千葉市美術館)

 千葉市美術館で、企画展「Nerhol 水平線を捲る」が開催される。Nerhol(ネルホル)は、田中義久(1980〜)と飯田竜太(1981〜)により2007年に結成されたアーティストデュオ。ふたりの対話を契機に、人や植物など「移動」にまつわる様々な事象のリサーチを通じ、他者に開かれてきた長年におよぶ表現活動の歩みを、美術館で初となる大規模な個展によって紹介する。

 Nerholの活動は、グラフィックデザインを基軸とした田中と、彫刻家である飯田の協働性を特徴としている。人物の連続写真をかさねて彫る初期のポートレートから、帰化植物や珪化木、アーカイブ映像まで対象を広げ、独自の世界観を深化し続けてきた。写真と彫刻、自然と人間社会、見えるものと見えないものといった複数の境界 / 間を、日々の会話のように行き来して紡がれてきた作品は、多様な解釈へと誘う。

 本展では、これまでの活動における重要作や未発表作に加え、千葉市の歴史や土地と関わりの深い蓮をテーマとした最新作、さらにはふたりが選ぶ美術館のコレクションを展示し、この場所だけでしか体験できない空間を創出する。人間の知覚や現代社会における一義的な認識ではとらえることができない、Nerholによる時間と空間の多層的な探究は、千葉の地で豊かな展開を見せることだろう。

会期:2024年9月6日~11月4日
会場:千葉市美術館
住所:千葉県千葉市中央区中央3-10-8
電話:043-221-2311
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00)
休館日:9月9日、9月24日、10月7日、10月21日 ※第1月曜日は全館休館
観覧料:一般 1200円 / 大学生 700円 / 小学・中学・高校生 無料

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