千葉の海風とともに。千葉県立美術館が五十嵐靖晃の回遊型美術展覧会「海風」を開催中

千葉県立美術館の開館50周年を記念し、アーティスト・五十嵐靖晃による回遊型美術展「海風」が開催されている。人々との協働と自然の調和を通じて、新たな文化の創造を目指すプロジェクトとなっている。会期は9月8日まで。

展示風景より、五十嵐靖晃《そらあみ》(2024) 撮影=みさこみさこ

 千葉県立美術館が、開館50周年を記念して千葉県出身のアーティスト・五十嵐靖晃による回遊型美術展覧会「海風」を開催している。会期は9月8日まで。

 五十嵐は1978年千葉県生まれ。人々との協働を通じてその土地の暮らしと自然とを美しく接続させ、景色をつくり変えるような表現活動を展開。その作品は、自然と人間の関わりをアートとして表現し、多様な人々をつなげるものだ。2005年にヨットで日本からミクロネシアまで約4000キロメートルを航海した経験をもとに「海からの視座」を活動の基盤としている。

 本展では、美術館の建築空間を活かした新作インスタレーションや収蔵作品とのコラボレーション、五十嵐の活動のドキュメント展示など多岐にわたる展示が展開。また、千葉みなとエリアをフィールドに屋外展示を行い、この土地の魅力を明らかにし、かつての海の上である埋立地に新たな文化を創造することを試みる。

展示風景より、《海織り》と《糸の星》(いずれも2024) 撮影=みさこみさこ

 千葉県立美術館での展示作品のひとつ《海織り》は、メタボリズムの建築家・大髙正人による美術館の展示空間を活かして、美術館内部に巨大な海面を織り上げるインスタレーション。かつて海であった埋立地の記憶を呼び起こし、来場者に新たな視点を提供する。また、《糸の星》という作品では、一般公募した糸玉を星に見立てて、満天の星が広がる空間を創出する。糸玉には巻いた人それぞれの個性が表れ、一人ひとりの想いが集まりひとつの景色となる。

展示風景より、《わたぶね》(2024) 撮影=みさこみさこ

 また、2ヶ月間の展覧会期間を綿の航海に見立てた作品《わたぶね》や、五十嵐のこれまでの活動を資料とともに振り返るドキュメント展示「記憶の海」、ギュスターヴ・クールベをはじめとする美術館の所蔵作品と五十嵐によるコラボレーション展示「再生の海」も行われる。従来の展示に新たな視点を加え、来場者に新しい発見を提供するものだ。

撮影=みさこみさこ

 無料展示としては、さんばしひろばで五十嵐の代表作《そらあみ》が紹介。同作は、ボランティアサポーターの「海風クルー」とともに編み上げられ、工場地帯を背景に千葉みなとならではの海の風景を現出させる。

展示風景より、《そらあみ》(2024) 撮影=みさこみさこ

 千葉ポートタワーでは、《結城の帆柱》というプロジェクトのプラン展示が行われる。これは、千葉みなとのランドマークである高さ125メートルのポートタワーを帆柱に見立ててシンボル化するものである。また、《船霊様》という作品では、帆柱に祀られる船の守護神である「船霊様」をポートタワー内部に制作し、千葉みなとが航海に出るイメージを象徴的に表現する。

《船霊様》のためのドローイング 2024

 千葉ポートパーク展望の丘では、風を可視化する吹き流し《風の子》が展示。風を通して埋立地にいる神様を想像させるこの作品は、近隣の小学生とともに制作される。会期中に開催されるワークショップを通じて、さらに数を増やし、新たな景色を形成する。

《風の子》のためのドローイング 2024

編集部

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