2024.7.12

三連休に行きたい展覧会ベスト10。鴻池朋子、ヤノベケンジ、大地の芸術祭にオバケ展まで

今週開幕・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。

「ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と」(岡本太郎記念館)展示風景より
前へ
次へ

もうすぐ閉幕

アンゼルム・キーファー個展「Opus Magnum」(ファーガス・マカフリー東京

展示風景より

 東京・青山にあるファーガス・マカフリー東京で、アンゼルム・キーファーによる個展「Opus Magnum」が開催されている。

 アンゼルム・キーファーは1945年、ドイツ・ドナウエッシンゲン生まれ。フライブルク大学で法律を学ぶが、美術家を志して69年にカールスルーエ芸術アカデミーに入学。70年にデュッセルドルフ芸術アカデミーに移り、ヨーゼフ・ボイスに師事した。69年、ヨーロッパ各所でナチ式に敬礼する自身の姿を撮影した写真シリーズ「占拠」を発表。その後も、ナチスの無謀なイギリス侵略計画を取り上げた「あしか作戦」(1975)などの写真作品で、ドイツの歴史上の記憶を揺り起こした。80年には第39回ヴェネチア・ビエンナーレ西ドイツ館で個展を開催し、この頃から、神話や宗教といった普遍的なテーマへと移行し、わらをキャンバスに付着させた絵画シリーズを制作。物質感のある叙情的な大作も数多く手がけている。

 キーファーにとって日本での個展は1998年以来。ガラスケースの作品と水彩画、計20点によって展示が構成される。また、12人の著名な執筆者によるエッセイや各作品についてのテキストを収めた160 ページの展覧会カタログも出版されので、あわせてチェックしたい(展示スペースの都合により、一度の入場者数は最大5名までとなる)。

会期:2024年4月2日〜7月13日
会場:ファーガス・マカフリー 東京
住所:東京都港区北青山3-5-9
開館時間:11:00~19:00
休館日:日月祝、4月5日
料金:無料

「植田正治と土門拳 −巡りあう砂丘−」(土門拳記念館

植田正治 土門拳と石津良介 1949 一般財団法人 日本カメラ財団 所蔵

 土門拳記念館で、写真史上初の2人展となる特別展「植田正治と土門拳 −巡りあう砂丘−」が開催されている。

 植田正治(1913〜2000)と土門拳(1909〜1990)は、ともに20世紀の日本を代表する写真家であり、同時に対照的な個性を持った作家としてしばしば比較されてきた。独自の演出的手法によって生み出される植田作品が「植田調(UEDA-Cho)」と称され国内外で高く評価されてきたいっぽうで、土門は「絶対非演出」を掲げたリアリズム写真の旗手として広く知られている。

 しかし、ふたりは戦後まもなく写真雑誌の企画で鳥取砂丘における合同撮影会を行い、お互いの姿をレンズに収めるなど、その長いキャリアにおいてしばしば接点を持ってもいた。両者が多数の文章などに刻んだ写真美学からは、相違点のみならず様々な共通点もうかがえ、才能を持った2人のアーティストが戦後写真史を発展させてきた軌跡をも感じることができる。植田・土門の仕事を改めてとらえ直そうとする展覧会だ。

会期:2024年4月5日~7月15日
会場:土門拳記念館
住所:山形県酒田市飯森山2-13(飯森山公園内)
電話:0234-31-0028
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:4~11月は無休

今週開幕

「五十嵐靖晃 海風」(千葉県立美術館ほか千葉みなとエリア)

会場

 千葉県立美術館で開館50周年記念を記念した展覧会「五十嵐靖晃 海風」が開催される。本展は「かつての海の上であった埋立地に新たな文化をつくる」を基本コンセプトに、千葉みなとエリアを舞台として開催する回遊型美術展覧会だ。

 千葉県出身のアーティスト・五十嵐靖晃は、人々との協働を通じて、その土地の暮らしと自然とを美しく接続させ、景色をつくり変えるような表現活動を各地で展開してきた。

 本展では美術館の建築空間を生かした新作インスタレーションのほか、収蔵作品とのコラボレーション、五十嵐の活動のドキュメント展示で構成する館内展示に加え、千葉みなとエリアをフィールドとして屋外に作品を展示。土地の魅力を明らかにし、かつての海の上であった埋立地に新たな文化を創造しようとする展覧会だ。

会期:2024年7月13日~9月8日
会場:千葉県立美術館ほか千葉みなとエリア
住所: 千葉県千葉市中央区中央港1-10-1
開館時間:9:00〜16:30(金、土、7月14日と8月11日は〜19:30) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(休日の場合は翌日)
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 500円 / 中学生以下無料

「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」(青森県立美術館ほか)

メインビジュアル

 鴻池朋子の個展「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」が青森県立美術館で開催される。会期は7月13日〜9月29日。

 鴻池は東日本大震災以降、地球の振動を新たな画材と感じ、旅をしては野外の技法を習得し、時に土木工事や縫いものをメディアに「絵」を描いてきた。昨年より東北でスタートした《メディシン・インフラ(薬の道)》は、鴻池が各地をめぐり、縁のあった場所に自作を展示保管してもらう長期的なプロジェクトで、その活動は福島、岩手、北海道へと少しずつ広がっている。また、鴻池は現在も能登半島地震の被災地の仮設住宅に設置されるカーテン作品を制作しており、その住宅もまたプロジェクトの一端を担うようになる。

 「作家やアーティストのようにメッセージや問いを投げかけるのではなく、後はもう自分の体しかない、というギリギリのところまで連れだしたい」と語る鴻池。観客の体がその場に晒された時、アートが人間の本能的なものに向けて、豊かに染み渡るメディシン (薬草)のように機能していくことが期待される。

会期:2024年7月13日〜9月29日
会場:青森県立美術館その周辺野外、国立療養所松丘保養園 社会交流会館
住所:青森県青森市安田近野185(青森県立美術館)
開館時間:9:30〜17:00(社会交流会館は10:00〜16:00)
休館日:美術館 7月22日、8月13日、26日、9月9日、24日 / 社会交流会館 月
料金:美術館 一般1500円 / 高校・大学生 1000円 中学生以下無料 ※社会交流会館は無料

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」

「大地の芸術祭 2022」十日町エリア「うぶすなの家」展示風景より、布施知子《うぶすなの白》(2022) 撮影=中島良平

 25周年を迎える「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」(以下、大地の芸術祭)。2024年に開催予定となる第9回目の企画が発表された。総合ディレクターは北川フラム。

 大地の芸術祭は2000年に初めて開催。これまで3年に1度、おもに7月から9月にかけて約50日前後の会期で開催されてきたが、21年の新型コロナウイルスによる1年の延期を受けて、22年は4月29日から11月13日の会期で実施。来年は7月13日から11月10日までの87日間の会期で開催が予定されている(火水は定休日)。

 同芸術祭は十日町、川西、中里、松代、松之山、津南といった6つのエリアをまたぎ開催されるもので、各エリアで17の国と地域から72組のアーティストやプロジェクトが参加を予定している。なお、会期中はウクライナを代表するアーティストや、専門家たちが登壇する特別イベント「UKRAINE WEEK(ウクライナウィーク)」が会期前日の7月12日から21日まで開催されている。

会期:2024年7月13日〜11月10日(87日間)
会場:越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)
開館時間:10:00〜17:00(10・11月は〜16:00)
定休日:火水(ただし、8月13日、14日は一部施設公開)
料金(前売):一般 4500(3500)円 / 小中高生 2000(1000)円 / 小学生未満無料 ※前売り券は7月12日まで

「ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と」(岡本太郎記念館

展示風景より

 東京・青山の岡本太郎記念館で美術家・ヤノベケンジによる企画展「ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と」が開催される。会期は7月12日〜11月10日。

 ヤノベは1965年大阪府生まれ。1991年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。1990年代初頭より「現代社会におけるサヴァイヴァル」をテーマに機能性を持つ大型機械彫刻を制作。2017年、「船乗り猫」をモチーフにした、旅の守り神《SHIP'S CAT》シリーズを制作開始。2022年に開館した大阪中之島美術館には、シンボルとして《SHIP'S CAT(Muse)》(2021)が恒久設置された。

 ヤノベは2011年から翌年にかけて「ヤノベケンジ:太陽の子・太郎の子」を岡本太郎記念館で開催。本展は12年ぶりに同館で開催される個展となる。ヤノベは今回《BIG CAT BANG/猫大爆発》を中心に展示を構成。宇宙船「LUCA号」に乗って地球に到達した「SHIP'S CAT/宇宙猫」が無機質だった地球に生命を着床させたという壮大な物語を描くという。

会期:2024年7月12日~11月10日
会場:岡本太郎記念館
住所:東京都港区南青山6-1-19
電話番号:03-3406-0801 
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:火(8月13日は開館)
料金:一般 650円 / 小学生 300円

「エッシャー 不思議のヒミツ」(豊田市美術館

《写像球体を持つ手》 1935年、リトグラフ M.C. Escher Foundation Collection, The Netherlands All M.C. Escher works © 2024 The M.C. Escher Company, Baarn, The Netherlands. All rights reserved mcescher.com

 「エッシャー 不思議のヒミツ」が豊田市美術館で開催される。マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898〜1972)は、オランダの版画家。デルフトの工科学校で学んだ後、ハールレムの建築・装飾学校へ移り建築を、その後すぐに版画を学んだ。卒業後にイタリアに旅したエッシャーは、その後も同地を訪れ、初めのうちはイタリア風景を題材にした精緻な描写による版画を制作する。

 そのあいだ、スペインに旅行した際にグラナダのアルハンブラ宮殿を訪れ、そのアラベスクによる装飾に注目し、動物や爬虫類、昆虫などを様式化させた形態によって画面全体を規則的に埋め尽くす抽象的、幾何学的な作品をつくり始める。やがてそれを深化させ、図と地の関係や、平面による描写と見かけの立体性との関係における錯視効果をねらった作品を生み出した。

 本展では、エッシャーがサミュエル・イェッスルン・ド・メスキータに師事していた頃のアール・ヌーヴォーにインスピレーションを得た作品をはじめ、イタリア滞在時代の作品も含めた約160作品を展観する。あわせて、エッシャーの不思議な世界に入り込むことができる様々な体験展示が会場のあちらこちらに用意されている。それらによって、エッシャー作品の根底にあり、新しい世代のあらゆる分野の芸術家に刺激を与え続けている数多くの遠近法的、幾何学的、構成的パラドックスと能動的に関わる展覧会となりそうだ。

会期:2024年7月13日~9月23日
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
電話:0565-34-6610
開館時間:10:00~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)
観覧料:一般 1700円 / 高校・大学生 1200円 / 中学生以下 無料

「オバケ?」展(PLAY! MUSEUM

 古今東⻄、さまざまな呼び名で存在してきたオバケ。東京・立川のPLAY! MUSEUMでは、その名を聞いただけで人をワクワクさせるマジックワード「オバケ」を、規格外のクリエーションで楽しみ尽くす展覧会を開催する。

 多彩なクリエイター約20組が参加し、名作絵本『ねないこだれだ』を落語家の春風亭一之輔が朗読する怖い部屋や、谷川俊太郎・谷川賢作親子による軽快なオバケ音楽「けいとのたま」や、アニメーション作家・加藤久仁生の新作アニメーションなどを用意。

 また、日本美術におけるオバケの歴史、500 冊のオバケ絵本など、オバケを探究し作品化する「オバケ研究所」も設立。「オバケ屋敷」、「オバケ湯」、オバケに変身する「オバケ工場」、ナイトミュージアムなど、親子で楽しむ企画も行われる。

会期:2024年7月13日〜9月29日
会場:PLAY! MUSEUM
住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
入場料:一般 1800円 / 大学生 1200円 / 高校生 1000円 / 中学生600円 / 小学生以下無料

「吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる」(埼玉県立近代美術館

吉田克朗 650ワットと60ワット 1970 コード、電球、鉄 埼玉県立近代美術館蔵
©️ The Estate of Katsuro Yoshida / Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 埼玉県立近代美術館で「吉田克朗展 ―ものに、風景に、世界に触れる」が開催される。吉田克朗(1943〜1999)は「もの派」の中核を担うとともに、その後は実験的な手法を通して絵画を探求した作家だ。1964年に多摩美術大学に進学した吉田は、斎藤義重のもとで指導を受け、同時代の海外の美術動向にも興味を持つようになる。1968年に卒業すると、同大学出身者らが関わっていた横浜市の共同アトリエで、関根伸夫、菅木志雄、小清水漸らと制作を行った。

 翌年の1969年から吉田は、物体を組みあわせ、その特性が自然に表出される作品を集中的に制作。このような作風を示す動向は後にもの派と称され、国際的に注目を浴びることになるが、吉田はその先鞭をつけた作家だった。また、物体をもちいた作品と並行して、自ら撮影した風景の写真を題材にした版画の制作も始める。 1971年になるともの派の作風から離れ、赤い色彩や筆触といった絵画的な要素を取り入れた作品を発表。1970年代は版画の制作に加え、転写などの実験的な手法を試みながら絵画表現を模索する。1980年代前半には、風景や人体を抽象化して描く「かげろう」のシリーズを手がけ、その後、粉末黒鉛を手指で擦りつけ有機的な形象を描く「触」のシリーズを精力的に制作した。

 55歳での早すぎる死を迎える直前まで、時代とともに変貌する美術動向のなかで、あるべき制作を追い求めた。本展では、記録写真や未公開の資料を交え、もの派を代表する初期作品から、1990年代後半の絵画の大作までをふり返り、吉田克朗の制作の軌跡をたどる。

会期:[前期]2024年7月13日~8月18日、[後期]2024年8月20日~9月23日
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
電話:048-824-0111
開館時間:10:00~17:30 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)
観覧料:一般 1100円 / 高校・大学生 880円 / 中学生以下、障害者手帳等をご提示の方(付き添いの方1名を含む)無料

特別展「ネコ」(大阪市立自然史博物館)

 哺乳類の中で完全に肉食に特化した、「究極のハンター」とも呼ばれるネコ科。現在、41種の野生ネコ科動物が地球上の多様な環境に適応し、生態系のさまざまな生き物と関わり合って暮らしている。

 本展では、ライオンやマヌルネコなどの野生ネコ科動物から身近なイエネコまで、最新の研究にもとづいてネコ科動物がもつ魅力に科学で迫るものだ。剥製や骨格標本、映像を交ることで進化したネコ科の身体の特徴や野生の生態を解説し、日本に生息するヤマネコとそのフィールド研究・保全なども詳しく紹介。

 さらにイエネコについても、野生のネコ科動物との共通性に着目した最新研究までを楽しく学ぶことができる展覧会だ。

会期:2024年7月13日~9月23日
会場:大阪市立自然史博物館
住所:大阪府大阪市東住吉区長居公園1-23
電話:06-4301-7285
開館時間:9:30~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:7月16日、22日、29日、8月19日、26日、9月2日、9日、17日