吉田博の木版画制作のきっかけとなった外遊から100年の節目に。「吉田博木版画の100年」がMOA美術館で開催へ

画家・吉田博が本格的に木版画を始めるきっかけとなった1923年の外遊から100年の節目に当たる今年、静岡・熱海のMOA美術館で「吉田博木版画の100年」が開催される。会期は12月16日〜2024年1月30日。

吉田博 米国シリーズ グランドキャニオン 1925

 明治から昭和にかけて、水彩画、油彩画、木版画の分野で西洋画壇を牽引した画家・吉田博(1876〜1950)。吉田が本格的に木版画制作を始めるきっかけとなった1923年の外遊から100年の節目に当たる今年、静岡・熱海のMOA美術館で「吉田博木版画の100年」が開催される。会期は12月16日〜2024年1月30日。

 吉田は福岡県久留米市出身。久留米藩士・上田束の次男として生まれ、18歳で上京、そして画塾・不同舎へ入門し本格的な画業をスタートさせた。1899年23歳のときには、描き溜めた水彩画を携え後輩とともに決死の渡米。デトロイト美術館などでの展示即売会の大成功によって資金を獲得し、ヨーロッパも巡り、2年後に帰国した。さらに2年後も、のちの夫人となるふじとともに渡米。3年以上をアメリカ、ヨーロッパで過ごすなど、古今の西洋美術に触れながらその画技を磨き、日本最初の洋画団体である太平洋画会の中心人物としても活躍していった。

 1920年44歳のとき、版元渡邊庄三郎との出会いにより、初めての木版画「明治神宮の神苑」を出版。23年の関東大震災後、被災した太平洋画会会員の作品販売を目的に渡米した際には、米国で日本の版画が評判であることを知り、自ら習得した西洋の写実的な表現と日本の伝統を生かした新しい木版画創造の必要性を実感することとなる。帰国した25年には、初めて自身が監修した木版画の作品を発表。その後の後半生は油彩画と並行し、木版画の制作に情熱を傾けた。

 本展では、吉田が初めて監修した私家版木版画「米国シリーズ」や、登山家でもある博が毎夏登った日本アルプスを主題とした「日本アルプス十二題」、刻一刻と変化する海をとらえた「瀬戸内海集 帆船」など代表作品を約70点にわたって展示。会場に設置される映像作品では、高精細な作品の映像を投影することで、精巧に表現された吉田の版画を鑑賞することも可能となる。

吉田博 瀬戸内海集 帆船 朝 1926
吉田博 日本アルプス十二題 劔山の朝 1926

編集部

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