六甲ミーツ・アートからレスリー・キー、ダラ・バーンバウム展まで。今週末に見たい展覧会ベスト7

今週開幕した・閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023」の展示風景より、武田真佳《case》

椿昇や川俣正らが参加。「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023」(神戸・六甲山上野9会場)

 兵庫県神戸市を代表する観光地のひとつである六甲山。ここを舞台に2010年から毎年開催されている現代美術の芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩」の第14回目が、8月26日に開幕する。

展示風景より、わにぶちみき《Beyond the FUKEI》

 今年は「表現の向こう側(にあるもの)Beyond Representation」をテーマに掲げ、表現者それぞれの作品とその先にあるものに目を向けてもらおうというメッセージが込められている。椿昇や川俣正らベテランアーティストのほか、森山未來がキュレーションする「Artist in Residence KOBE(AiRK)」、伊丹豪、尾花賢一、開発好明、中﨑透、船井美佐、光岡幸一らが参加を予定している。

 舞台となるのは、六甲山上の9会場(ROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園、六甲ガーデンテラスエリア、六甲ケーブル、トレイルエリア、風の教会エリア、六甲有馬ロープウェー 六甲山頂駅、兵庫県立六甲山ビジターセンター、六甲山サイレンスリゾート)。新たに同芸術祭の拠点と位置づけるROKKO森の音ミュージアムの周辺には、野外展示エリアを新設するとともに、三梨伸ら4作家の作品を会期終了後も継続展示する予定だ。

会期:2023年8月26日〜11月23日
会場:神戸・六甲山上野9会場
問合せ:078-891-0048 
開館時間:10:00〜17:00 ※会場によって時間は異なる。17時以降鑑賞可能な作品もあり。 
休館日:無休(ただし六甲サイレンスリゾートのみ8月〜10月の毎週月曜休業。月曜が祝日の場合は翌火曜) 
鑑賞パスポート料金(山上窓口):大人(中学生以上) 3000円 / 小人(4歳〜中学生) 1200円
ナイトパス付鑑賞パスポート料金(山上窓口):大人(中学生以上) 4000円 / 小人(4歳〜中学生) 1700円 ※「ひかりの森〜夜の芸術散歩〜」会場への入場がセットになったパスポート
公式サイト:https://rokkomeetsart.jp/

25年間で撮影した作品群から約180点を集結。レスリー・キー「LIFE」(キヤノンギャラリー S

 フォトグラファーとしてアート、ファッション、広告の撮影、映像監督などを中心に世界各国で活動しているレスリー・キー。その写真展「LIFE」がキヤノンギャラリー Sで始まっている。

メインビジュアル

 本展のタイトル「LIFE」は、キーの人生に多大な影響を与えたアヴェドンが生誕100周年を迎えるタイミングで開催することから名付けられた。会場は、彼が25年間で撮影した作品群から、ソロカットはモノクロを、グループカットはカラーを中心に、計179点の作品で構成。モデルや著名人をシンプルな背景で撮影した、被写体の美しさが際立つ作品が展示されている。

 また、9月5日からキヤノンギャラリー銀座、キヤノンギャラリー大阪ではキーの写真展「JOURNEY」も開催。これまでの写真家生活を「写真の旅」にたとえ、街を背景にモデルや著名人を撮影したファッションストリートフォトを展示する予定だ。

会期:2023年8月22日~10月3日
会場:キヤノンギャラリー S
住所:東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー1階
電話番号:03-6719-9021 
開館時間:10:00~17:30
休館日:日、祝
料金:無料

「人形」と「美術」の境界を問う。「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」(渋谷区立松濤美術館

 日本の「人形」の歴史を振り返りながら、「人形」と「美術」の境界の揺らぎまでを問う展覧会「私たちは何者? ボーダレス・ドールズ」が渋谷区立松濤美術館で8月27日まで行われている。

展示風景より、村上隆《Ko²ちゃん(Project Ko²)》(1997)

 日本において「人形」といえばお雛様やフィギュアが想起されることが多いが、人形の歴史を振り返ると、民俗、考古、工芸、彫刻、玩具、現代美術と幅広いジャンルのボーダーラインを飛び越えてきた存在であることがわかる。本展は、その体系化されきらず一括りにできない様相を、「芸術」という枠に押し込めることなく紹介するものだ。

 展覧会は10章構成で「人形」が持つ多面性に迫る。平安時代から現在までの人形を通じて、日本の立体造形の根底に脈々と流れてきた精神に向き合ってほしい。レポート記事はこちら

会期:2023年7月1日〜8月27日([前期] 7月1日〜30日 / [後期] 8月1日〜27日)※展示替えあり
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
電話番号:03-3465-9421
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生・60歳以上 500円 / 小中学生 100円※本展陳列作品は一部18歳未満鑑賞不可の作品あり。

日本画家の枠を超える。「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」(東京ステーションギャラリー

 今年の2月から京都国立近代美術館で開催された開館60周年記念展「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」の巡回展が、東京ステーションギャラリーで8月27日に会期が終了する。

展示風景より、 中央は甲斐荘楠音《幻覚(踊る女)》(1920頃)

 戦前の日本画壇で高い評価を受けながら、1940年代初頭に映画業界に転身した異例の人物・楠音。晩年の70年代半ばから再評価の機運が高まるも、初の回顧展が行われたのは没後約20年を経た97年のことであり、その展覧会において日本画家としての活動の全貌が明らかになり、「京都画壇の異才」として評価が確立したという経緯がある。

 同展以来26年ぶり、二度目の回顧展となる本展は、その名の通り楠音の全貌と、日本画家の枠に収まりきらない「越境性」に焦点を当てたもの。序章と終章を含む5章構成で、絵画、写真、映像、スクラップブック、ポスター、写生帖など様々な資料を展示することで、日本画家という枠に収まらない甲斐荘の「越境性」を取り上げる。レポート記事はこちら

会期:2023年7月1日~8月27日 ※会期中展示替えあり
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485 
開館時間:10:00~18:00(金~20:00) ※入館は閉館30分前まで 
料金:一般 1400円 / 高大生 1200円 / 中学生以下 無料

ミレーを現代作家の視点でとらえ直す。「ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-」(山梨県立美術館

 19世紀のフランスにおいて自然とともに生きる農民の営みを描き続けた画家、ジャン=フランソワ・ミレー(1814〜1875)。ミレーの作品とともに、現代を生きる4人の現代作家の作品を紹介する展覧会「ミレーと4人の現代作家たち -種にはじまる世界のかたち-」が、8月27日に山梨県立美術館で閉幕する。

展示風景より、「第2章 大地/淺井裕介」

 同館にとってミレーは、開館時に代表作《種をまく人》を収蔵して以来、「自然豊かな県を象徴するコレクション」として収集を継続してきた重要な作家。本展は、山縣良和淺井裕介丸山純子志村信裕といった4人の現代作家を媒介として、ミレー作品をいまの視点でとらえることを試みるものだ。

 会場は、4人の現代作家ごとに4章で構成されている。作家らがミレーの作品を解釈し、自身の視点でとらえようとするような思考のみならず、これらの作家の作品を通じて、ミレー作品の新たな側面を発見することができる。レポート記事はこちら

会期:2023年7月1日〜8月27日
会場:山梨県立美術館 特別展示室
住所:山梨県甲府市貢川1-4-27 
開館時間:9:00~17:00 ※入館は16:30まで 
料金:一般 1000円 / 大学生 500円 / 高校生以下無料

アーティストとオーディエンスの新たな関係を探る。「あなたのアートを誰に見せますか?」(東京藝術大学大学美術館陳列館

 東京藝術大学大学美術館陳列館で8月27日まで開催中の「あなたのアートを誰に見せますか?」展も注目すべき展覧会のひとつだ。

メラニー・ボナーヨ When the body says Yes Courtesy of the artist and AKINCI

 本展は、社会の様々な問題に向き合うアーティストの作品を通して、孤独、身体とセクシャリティ、人間と自然の関係、他者との協働や連帯など、今日的問題について考えるもの。鑑賞者あるいは「オーディエンス」の存在に注目し、アーティストとそれを見る人との相互関係と鑑賞体験の新たな可能性を探るという。

 参加アーティストは、青山悟、アンドレア・バウアーズ & スザンヌ・レイシー、メラニー・ボナーヨ、小林正人、リー・ムユン、岡田夏旺、パク・サンヒョン、海野林太郎。アーティストが提示する多様な視点を紹介しつつ、オーディエンスの意見も展示のなかで視覚化される。

会期:2023年8月8日~8月27日
会場:東京藝術大学大学美術館
住所:東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学大学美術館
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:10:00~17:00
料金:無料

メディア・アートの先駆者。「DARA BIRNBAUM」(プラダ青山)

 メディア・アートの歴史を理解するうえで欠かせないアーティスト、ダラ・バーンバウム。その個展が、東京・表参道にあるプラダ青山店で8月28日まで開催されている。

ダラ・バーンバウム Kiss the Girls: Make Them Cry 1979
Installation view, Art Institute of Chicago, 2016
Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery
©︎Dara Birnbaum

 バーンバウムは、先駆的なヴィデオ・アート、メディア・アート、インスタレーション作品を通して、マスメディアのイメージのイデオロギー的かつ耽美的な性質を批判することで知られている。本展は、ニューヨーク近代美術館で長年キュレーターを務めたバーバラ・ロンドンがキュレーションするもので、1979年から2011年までのあいだに制作された4作品が展示されている。

 初期作品のひとつ《New Music Shorts》、同じくサウンドを用いたインスタレーション作品《Bruckner: Symphony No. 5 in B-Dur》のほか、《Kiss the Girls: Make Them Cry》やロマン派の作曲家夫婦クララ・シューマンとロベルト・シューマンの人生と功績を考察した《Arabesque》といったヴィデオ・インスタレーション作品が楽しめる。

会期:2023年6月1日~8月28日
会場:プラダ青山店5階
住所:東京都港区南青山5-2-6
開館時間:プラダ青山店に準ずる 
料金:無料

編集部

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