森美術館の対応に異議。Chim↑Pomが「Chim↑Pom from Smappa!Group」へと改名

Chim↑Pomが、4月27日を以て「Chim↑Pom from Smappa!Group」へと改名する。その経緯は、森美術館で開催中の「ハッピースプリング」展へ、Smappa!Groupからの協賛申し出だけが美術館に断られたことに端を発しているという。

 日本を代表するアーティスト・コレクティブとして知られるChim↑Pomが、4月27日を以て「Chim↑Pom from Smappa!Group」へと改名することを発表した。

 その経緯は、森美術館で開催中の「ハッピースプリング」展での設営費などを賄うために美術館から協力要請を受け、一部作家側で集めることとなった約1000万円の協賛金にSmappa!Groupからの協賛申し出だけが美術館に断られたことに端を発しているという。

 Chim↑Pomは声明文で、双方は話し合い解決策を模索したが、美術館側は「六本木ヒルズという『まちづくり』における『ブランディング』」だと理由を説明し、「森美術館はヒルズという『文化都市』の顔である」と、接客を伴う水商売の会社のロゴは掲載しないと今月改めて回答があったとしている。

 Smappa!Groupは新宿歌舞伎町で18年の歴史を持つ、ホストクラブやギャラリー兼バー「デカメロン」、歌舞伎町初の書店であった旧「歌舞伎町ブックセンター」、そして飲食店や介護施設、美容室などを手掛ける企業であり、Chim↑Pomメンバーのひとりであるエリイの夫、手塚マキが会長を務めている。

 これまで、Smappa!Groupとの協働においてChim↑Pomは、「LOVE IS OVER」や、スクラップアンドビルドプロジェクト「また明日も観てくれるかな?」展、そして「にんげんレストラン」など、代表的なプロジェクトを生み出してきた。

 森美術館の対応を、Chim↑Pomは「職業差別だ」ととらえており、「クリエイティブ産業が街から『猥雑』なものを十把一絡げに職種や属性により排除する『旧来のジェントリフィケーション』の典型だ」としている。

 「社会全体が、その多様性を謳う(とくに森美術館はそのような趣旨をアナウンスしていると思いますが)いっぽうで、実態としては公共性よりもブランディングを優先し、いざ自身の問題として直面すると排除する、という常套手段がまかり通ることに対しての違和感をここに強く示す所存でございます」(Chim↑Pomの声明文より抜粋)。

 さらに、Chim↑Pomは「ハッピースプリング」展において代表作《スーパーラット》が美術館から共同プロジェクトスペースに出されたことについて、「『表現の自由』に議論の余地が大きく生まれてしまったこと、また上述のSmappa!Groupの件と排除が続いたことの重大さを鑑みて、水面下での交渉に限界を感じた次第」だと訴えている。

 改名に際し、Chim↑Pomは森美術館に以下2点の対応を要請。「1. Chim↑Pom from Smappa!Groupを正式名称として、すべての媒体や広報物において使用を徹底して頂くこと」「2. 引き続き、Smappa!Groupの協賛金受け取りとロゴの掲載をご検討頂くこと」。

 またChim↑Pomの改名案について、Smappa!Groupは声明文で「法的な見地はさておき、なぜその取り決めがあるのか?について問い、話し合う機会を持ち、向き合い続けることを諦めない姿勢を表現する」ものだととらえている。

 なお、本件について「美術手帖」は森美術館にコメントを求めたが、本稿公開の時点ではまだ返信がない。Chim↑Pom声明文の全文はこちらから。

追記:本稿の公開後に森美術館 広報事務局より、「本件につきまして、森美術館のコメントは控えさせて頂きます」との返答があった。

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