様々な工芸の一大拠点として知られる富山・石川・福井の北陸3県。この地域を横断し、工芸の魅力を発信するため新たなプロジェクト「GO FOR KOGEI〜北陸で出会う、工芸の可能性〜」が本格的にスタートを切った。プロジェクトが始まったのは2019年。それまでバラバラで工芸祭などを行なってきた各地の実行委員会が連携し、ひとつの大きなプラットフォームが誕生した。
全体の監修は秋元雄史(東京藝術大学大学美術館館長・練馬区立美術館館長)が務め、プロデューサーは浦淳(認定NPO法人趣都金澤理事長・浦建築研究所代表取締役)が担う。
プロジェクトが始動するのは今年夏。8月から11月にかけて行われる同イベントでは、3県6ヶ所の大型展覧会をはじめ、作家や職人に出会える100ヶ所の「工房見学体験」、工芸の新しい価値を創造する「工芸ハッカソン」、そして6つの産地の工芸祭&アートフェアで構成。長期間にわたり、北陸全体で工芸の魅力を発信してく試みとなる。
浦は、「これまで内発的だった各工芸祭をまとめ、北陸の魅力を協力して発信していこうというのが趣旨。北陸工芸は地域に紐づいたもの。その精神性に触れられる機会になれば」と期待を寄せる。
また秋元は「北陸という広いエリアで工芸を見ることが重要」としながら、次のように意欲を語った。「すでにおこなわれているものを横につなぐことで発信力を大きくしていく。北陸の強さは生産地としての強さ。北陸工芸は伝統というイメージが強いが、新しい試みも行われている。新しい世代に工芸の魅力が伝わるようなものにしたい」
展覧会は、「世界の眺め─今日のアート、クラフト、デザイン」と題し、秋元がキュレーション。九代目・岩野市兵衛や沖潤子、桑田卓郎、舘鼻則孝、四代目田辺竹雲斎など23作家が歴史的建造物など6ヶ所を舞台に、作品を披露する。
2月24日には、このプラットフォームに関連したシンポジウム「北陸で出会う、工芸の可能性」が小松市のこまつ芸術劇場うららで開催。午前中には、工房を見学するモデルツアーも行われた。
シンポジウムでは、グラフィックデザイナーで日本デザインセンター代表の原研哉が登壇。基調講演「未来資源としての日本~守り継ぎ、世界の豊かさに寄与するもの」では、自身が携わってきたJAPAN HOUSEや、原の個人メディアで取り上げてきた様々なスポットを紹介しつつ、「伝統や美意識は過去のものではなく、これからの日本を運営するための資源」だと強調した。
「グローバルになるほどローカル(固有な場所の)な価値が高まる。いまはものづくりの時代ではなく、価値づくりの時代。INNOVATIONとAUTHENTICITYが重要で、日本は後者の宝庫」。
またトークセッション「北陸の工芸祭の多様性と展望」では、秋元や浦をはじめ、各工芸祭の代表が登壇。福井県鯖江市・越前市・越前町で行わている持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベント「RENEW」のディレクター・新山直広は、「それぞれの街で特色も事情も違う。それぞれの街の良さをどれだけ引き出せるか」が課題だとした。
今後、新幹線の延伸も予定されており、ますますアクセスが高まる北陸。これまで独自に動いていたプラットフォームが連携することで、これまでにないシナジーを生み出すだろう。今夏の「GO FOR KOGEI」と、その先に期待が膨らむ。