北陸3県が舞台。「GO FOR KOGEI 2021」に見る工芸の可能性

富山、石川、福井の3県にまたがる5つの会場を舞台に、2つの特別展によって構成される北陸工芸の祭典「GO FOR KOGEI 2021」が9月10日に開幕した。

大瀧神社・岡太神社の展示風景より、桑田卓郎の作品群

 古くから工芸分野で広く知られる富山、石川、福井の三県を舞台に、新たな芸術祭「GO FOR KOGEI 2021」が9月10日に開幕した。

 この祭典は、特別展Ⅰ「工芸的な美しさの行方 工芸、現代アート、アール・ブリュット」と特別展Ⅱ「工芸×Design 13人のディレクターが描く工芸のある暮らし」で構成されるもの。キュレーションはともに、東京藝術大学名誉教授で練馬区立美術館館長の秋元雄史が手がける。会場設計は建築家・周防貴之が担当した。

勝興寺の展示風景より、須藤玲子《89.319%》(2021)

 秋元は開幕にあたり、「北陸工芸の魅力を外に発信すると同時に、アーティストをクローズアップしていく」とコメント。「全国区、世界で活躍するアーティストも紹介するいっぽうで、地元の資源を見直すことを目指す。会場間の移動も含めて、体感的に楽しんでもらいたい」と意気込む。

 会場となるのは、特別展Ⅰが勝興寺(富山県高岡市)と那谷寺(石川県小松市)、そして大瀧神社・岡太神社(福井県越前市)。特別展ⅡがskloとNoetica(ともに石川県金沢市)。

勝興寺の展示風景より、須藤玲子《扇の舞》(2021)

 特別展Ⅰでは、青木千絵、沖潤子、桑田卓郎、nui project(しょうぶ学園)、須藤玲子、田中信行、四代 田辺竹雲斎など、工芸を中心としつつ、現代美術やアール・ブリュットの作家たち20組が参加する。工芸を技法だけでなく、素材との関わりという視点からとらえなおす試みであり、歴史ある寺社という場所性を活かしたスケールの大きな作品にも注目だ。

 3万平米の広大な境内を誇る勝興寺では、四代 田辺竹雲斎をはじめとする11名が大広間や台所など重要文化財で作品を展開。

勝興寺の展示風景より、四代 田辺竹雲斎《WORMHOLE》(2021)
勝興寺の展示風景より、横山翔平《unclear_04》(2021)
勝興寺の展示風景より、青木千絵《BODY 17-1》(2017)、《BODY 18-2》(2018)

 九谷焼の陶石が採れる白山の麓に位置する那谷寺では、沖潤子や田中信行ら5名が、特別拝観エリアにある書院や、庭園にある茶室「了了庵」で作品を見せる。

那谷寺の展示風景より、沖潤子の作品群
那谷寺の展示風景より、神代良明《Structual Blu 45.1》(2015)
那谷寺の展示風景より、田中信行《Inner side-Other side(連続する生命)2021-N》(2021)
那谷寺の展示風景より、佐々木類《水の記憶》(2021)

 全国で唯一「紙の神様」を祀る大瀧神社・岡太神社では、陶芸の世界で独自の作品を発表し続ける桑田卓郎の巨大作品群や、越前和紙の手漉きの技を引き継ぐ人間国宝、九代 岩野市兵衛による越前生漉奉書のインスタレーションが存在感を放つ。

大瀧神社・岡太神社の展示風景より、桑田卓郎の作品群
大瀧神社・岡太神社の展示風景より、桑田卓郎の作品群
大瀧神社・岡太神社の展示風景より、灯籠に貼られたのが九代 岩野市兵衛による越前生漉奉書
大瀧神社・岡太神社の展示風景より、牟田陽日《渾々と》(2021)
大瀧神社・岡太神社の展示風景より、金重有邦《伊部大柱》(2021)

 いずれの場所においても、作品単体だけではなく、場所との関係性、あるいは作品同士のつながりにも注目したい。

 特別展Ⅱは、プロダクトの視点から工芸をとらえるもの。原研哉や箭内道彦、皆川明、森岡督行、シトウレイなど、様々なジャンルで活動する13人がディレクターとなり、それぞれが様々な工房、アーティストとコラボレーション。成果物とももにその制作プロセスも展示されている。将来的な販売も見据えた、実験的な取り組みを見ることができる。

skloの展示風景より
Noeticaの展示風景より

 異なるふたつの視点から「工芸」を見つめる新たな試みとなっている「GO FOR KOGEI 2021」。各会場を巡りながら、その実践を堪能してほしい。

編集部

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