中止になっていた中国のマティス回顧展が開催へ。マティスの遺贈による280点以上が展示

北京のユーレンス現代美術センター(UCCA)で、アンリ・マティスの中国における過去最大規模の個展「Matisse by Matisse」が今年7月より開催される。フランスのマティス美術館のコレクションから280点以上の作品が展示される予定だ。

アンリ・マティス Women in Blue Gandoura 1951

 中国のロシアとの関係を懸念に、昨年北京のユーレンス現代美術センター(UCCA)で開催が中止になっていたアンリ・マティスの大規模な展覧会が、今年7月15日〜10月15日で開催されることとなった。

 本展は、マティスの中国における過去最大規模の個展。フランス・ノール県のル・カトー=カンブレシにあるマティス美術館の協力のもと、同館が所蔵するマティスの油絵、彫刻、水墨画、版画、切り絵、スケッチなど、280点余りを展示し、マティスの全キャリアを網羅するものだ。

 本来は2022年3月~6月に北京のUCCA本館、同年7月~10月にUCCAの上海分館で開催される予定だった。しかし、ノール県の地方行政機関は昨年3月、ロシアによるウクライナ侵攻における中国の立ち位置を理由に同国との文化交流を停止し、作品発送の約1週間前に貸し出しを中止したという。

 この騒動について、同館館長のフィリップ・ティナリは「美術手帖」の取材に対して次のように振り返っている。「フランスのノール県は比較的独立した行政機関なので、国の方針と完全に一致するわけではない。そこで私たちは、フランス文化省や大統領府と繰り返しコミュニケーションをとり、中国との文化交流を継続したいという思いを伝えた。また、パンデミックも(開催中止の)理由のひとつ。当時は作品の輸送が非常に困難で、美術館もスタッフを派遣することができなかったからだ」。

アンリ・マティス Two Young Women, the Yellow Dress and the Scottish Dress 1941

 今年4月、フランスのマクロン大統領は中国を訪問し、両国間の文化交流を強化することを再確認。その後、当初は2020年に予定され、コロナ禍により延期されたパリのヴェルサイユ宮殿と北京の紫禁城の共同展も、24年に開催されることが決定している。UCCAでのマティス展の実現は、中国とフランスの関係改善も一因と言えるだろう。

 マティスは亡くなる2年前に、自身のコレクションのなかからもっとも貴重な作品を故郷ル・カトー=カンブレシに寄贈し、マティス美術館のコレクションの中核をなした。作品の選定から展示室の設計、各作品の展示の細部に至るまで携わった。

 今回のUCCAでの展覧会は、このようなマティスの高度な関わりから発想されたもの。「Matisse by Matisse」をテーマに、マティス自身が選りすぐって寄贈した約300点のコレクションのなかから280点以上を出品し、その芸術的実践や創作過程、芸術に対する考え方を直接的に示す展示となる。

 また、本展は上海のUCCA Edgeにも巡回し、11月4日〜2024年2月18日の会期で開催される予定。パリのポンピドゥー・センター/国立近代美術館の協力を受け、8月20日まで東京都美術館で開催されている「マティス展」とあわせて、マティスの創造を楽しんでみてはいかがだろうか。

編集部

Exhibition Ranking