植島コレクション、ステファニー・クエールからKYOTOGRAPHIEまで。今週末に見たい展覧会ベスト6

今週開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」の展示風景より

作品収集の楽しさを探る。「UESHIMA COLLECTION」(フィリップス東京)

 2022年2月よりわずか1年3ヶ月で約600点の作品をコレクションしたという植島幹九郎。そのコレクションから21点の作品を精選して紹介する「UESHIMA COLLECTION」展が、5月10日からフィリップス東京のオフィスで行われている。

展示風景より、手前の壁面は左からジェイド・ファドユティミ《A Patchwork Trail》(2022)、カタリーナ・グロッセ《Untitled》(2022)

 本展では、アグネス・マーティン、ゲルハルト・リヒターなどの巨匠から、エイドリアン・ゲニーやジェイド・ファドユティミ、工藤麻紀子などの中堅・若手作家の作品が紹介。植島がアートコレクションの旅で実際に会ったことのあるアーティストを中心にしたラインナップだという。

 ギャラリー、オークション、オンラインなどあらゆる手段で作品を購入している植島だが、彼にとって実際にアーティストと会って作品の制作意図について言葉を交わすことがアートコレクションの醍醐味だという。現在、自身のウェブサイトやInstagramでコレクション作品を多言語で公開・発信することに取り組むいっぽう、北参道のプラベートスペースでは約250点の作品を展示。また来年には渋谷で一般向けのミュージアムの開設も計画している。

会期:2023年5月10日〜6月2日
会場:フィリップス東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4階
電話番号:03-6273-4818
開館時間:10:00〜17:00
休館日:土日祝
料金:無料

人類の歴史のなかで表現されてきた動物のイメージを探求する。「Animal Instinct 」(Gallery 38)

 人間と動物、そして自然の持つ力と向き合いながら、動物たちの姿を造形してきた彫刻家ステファニー・クエール。その4年ぶりとなる個展「Animal Instinct」が、5月11日に東京・神宮前のGallery 38で開幕した。

ステファニー・クエール Baboon I 2023 ©︎Stephanie Quayle Photography: Osamu Sakamoto

 イギリスのアイリッシュ海に浮かぶマン島に生まれ育ったクエールは、現在も自然豊かなこの島で制作を続けている。新石器時代や古代ギリシャの壺に使われたものと同じ材料を用いて制作することで、4万年の人類の歴史のなかで表現されてきた動物のイメージの探求を試みている。

 本展では、マン島の自宅周辺から掘り出された土も一部使用して制作された新作が紹介されるほか、ヒンドゥー教で神聖な生き物とされる牛や、チベット人や古代エジプト人に崇拝されるハゲワシ、古代エジプト人に崇敬され恐れられたヒヒ、ヒンドゥー教において神聖視されながら他の地域では悪者にされることもあるネズミなど、様々な動物たちが展示されている。クエールがつくり出すイメージとその実践に注目してほしい。

会期:2023年5月11日〜6月25日
会場:Gallery 38
住所:東京都渋谷区神宮前2-30-28
電話番号:03-6721-1505 
開館時間:12:00〜19:00 
休館日:月火祝 
料金:無料

発表の機会が減ってしまった作家に再び注目する。「マッドスプリング」(Kanda & Oliveira)

 今年1月から2月にかけて西船橋のKanda & Oliveiraで開催された上田勇児と梅津庸一による二人展「フェアトレード  現代アート産業と製陶業をめぐって」に続き、梅津が共同企画した展覧会「マッドスプリング」が、同ギャラリーで開催されている。会期は6月10日まで。

「マッドスプリング」展示風景より、写真左手が川島郁予《雨》(2004)、右が安藤裕美の水彩画やアクリル画 撮影=高橋宗正

 本展では、梅津に加え、安藤裕美、冨谷悦子、川島郁予、森栄喜、高田冬彦、東城信之介といった梅津が「ほとんど会ったことすらない作家たち」が参加。展覧会には明確なテーマが設定されていないが、その問題意識のひとつとしては、結婚や出産により活動の幅を狭めてしまい、または就職により制作を止めてしまうといったアーティストの存在があり、細々と制作を続けたい、作品の発表を再開したいと考えているアーティストを集めるのがひとつのコンセプトだったという。

 例えば、川島郁予は旧姓の山田郁予時代に高橋龍太郎のコレクションに収蔵されるなど活躍した作家だったが、近年は活動しておらず、現在の状況も不明だった。本展のために様々な人の協力を得て連載がとれ、16年越しに初公開する作品などが用意された。また、冨谷悦子も地方移住によって、発表の機会が減ってしまった作家。このような作家たちを取り上げるのが、同ギャラリーの今後のひとつの軸になっていくという。

会期:2023年5月9日〜6月10日
会場:Kanda & Oliveira
住所:千葉県船橋市西船1-1-16-2
開館時間:13:00〜19:00 
休館日:日、月、祝日
料金:無料

地球という空間を考える。「ダムタイプ|2022: remap」(アーティゾン美術館)

 アーティゾン美術館で、「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」が5月14日まで開催されている。

展示風景より

 特定のディレクターをおかず、また既成のジャンルにとらわれない、あらゆる表現の形態を横断するマルチメディア・アートとして知られているダムタイプ。本展では、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示で発表されたダムタイプの新作《2022》を再配置し、《2022: remap》として日本初公開。時間や空間が展覧会のテーマとなっており、共存や共有を考え地球という空間をどのようにとらえるのか鑑賞者に促すように構成されている。

 なお、同館では「アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙」も同時開催中。こちらもあわせてチェックしてほしい。

会期: 2023年2月25日〜5月14日
会場:アーティゾン美術館
住所: 東京都中央区京橋1-7-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(5月5日をのぞく金は〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1200円(日時指定予約制、当日チケット[窓口販売]1500円) / 学生 無料(要ウェブ予約)

日本の近代美術の魅力に迫る。「重要文化財の秘密」(東京国立近代美術館)

 1952年に開館し、2022年度は開館70周年を迎えた東京国立近代美術館。これを記念して、明治以降の絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定された作品のみで構成された展覧会「重要文化財の秘密」が5月14日に終了する。

展示風景より、高村光雲《老猿》(1893)東京国立博物館

 会場には、狩野芳崖、岸田劉生、黒田清輝、高橋由一、高村光雲、竹内栖鳳、横山大観ら巨匠作家の名品が集結。ただ展示するだけではなく、それぞれの作品がどのような評価の変遷を経て、重要文化財に指定されるに至ったのかという美術史の秘密にも迫っていく構成も注目ポイントだ。

 重要文化財は保護の観点から貸出や公開が限られるため、第一級の作品群を集めた本展を通じ、日本の近代美術の魅力を再発見してみてはいかがだろうか。

会期:2023年3月17日~5月14日
会場:東京国立近代美術館1F 企画展ギャラリー
住所: 東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
料金:一般 

多彩な視点で15のプログラムが展開。「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」(京都文化博物館 別館ほか)

 京都を舞台に開催される「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。その2023年版が5月14日まで京都文化博物館 別館や二条城など、京都市内各所にて開催されている。

展示風景より、石内都「Mother's」シリーズ 壁面は頭山ゆう紀による作品

 歴史的建造物やモダンな近現代建築など、京都ならではの特別感あふれる空間で、国内外の重要作家の写真作品を紹介するこの写真祭。今年は「BORDER」をテーマに、難民問題、ファッション、ウクライナ、ティーンエイジャーなど多彩な視点で15のプログラムを展開している。

 参加アーティストは、マベル・ポブレット、高木由利子、ボリス・ミハイロフ、ジョアナ・シュマリ、山内悠、セザール・デズフリ、松村和彦、ココ・カピタン、山田学、デニス・モリス、パオロ・ウッズ&アルノー・ロベール、ロジャー・エーベルハルト、石内都、頭山ゆう紀、世界報道写真展、インマ・バレッロ。京都において写真や音楽、そして伝統文化など総合的な芸術を楽しめる機会をお見逃しなく。

会期:2023年4月15日〜5月14日
会場:京都市内各所
電話番号:075-708-7108(KYOTOGRAPHIE 事務局)
料金:[会期中販売] 一般 6000円 / 学生 3000円 / 中学生以下無料
※開館時間、休館日はプログラムにより異なる

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