東北地方初の個展。「⼤巻伸嗣展―地平線のゆくえ」(弘前れんが倉庫美術館)
空間全体をダイナミックに変容させ、幻想的なインスタレーションやパブリック・アートで広く知られる⼤巻伸嗣。その東北地方初となる個展が、弘前れんが倉庫美術館で開催される。会期は4月15日〜10月9日。
大巻は1971年岐⾩県⽣まれで神奈川県在住のアーティスト。「存在」とは何かをテーマに制作活動を展開し、環境や他者といった「外界」と、記憶や意識などの「内界」、その境界である「⾝体」の関係性を探り、三者の間で揺れ動く、曖昧でとらえどころのない「存在」に迫るための空間創出を試みる作品を発表してきた。
本展では、近年の代表作のひとつ「Liminal Air Space-Time」シリーズをはじめ、新作インスタレーションを中⼼に展示。弘前の⼟地と⼈々の記憶をとどめる弘前れんが倉庫美術館と⼤巻の紡ぐ再⽣と創造の物語に注目したい。
会期:2023年4⽉15⽇〜10⽉9⽇
会場:弘前れんが倉庫美術館
住所:⻘森県弘前市吉野町2-1
電話番号:0172-32-8950
開館時間:9:00〜17:00 ※⼊館は閉館の30分前まで
休館日:火
料金:⼀般 1300円 / ⼤学・専⾨学校⽣ 1000円 / 高校生以下、弘前市内の留学⽣、満65歳以上の弘前市⺠は無料
自然の営みから発露するかたちと表現に注目。「発現する布—オセアニアの造形と福本繁樹/福本潮子」(国際芸術センター青森)
八甲田山麓に位置する青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)。この自然豊かな地において、染色を通じてオセアニアと日本の造形論を読み解く福本繁樹と、日本の伝統と現代的な技法から藍染めの可能性を追求し続ける福本潮子の展示「発現する布—オセアニアの造形と福本繁樹/福本潮子」が開催される。
本展は、3つの作品群によって表現媒体としての「布」の可能性に着目するもの。南太平洋メラネシアのタパ(樹皮布)や編み布など、織物以前から伝わる手仕事による布や、オセアニアと日本の造形論への洞察を通して「染め」にしかできない表現を追求してきた福本による作品、そして藍のもつ透明感や精神性を美術へと昇華し、地方の生活と労働のなかで生み出された古い自然布を用いた福本による作品は、鑑賞者に自然と人の関わりあいから生まれたかたちや表現について思いを馳せるきっかけを与えてくれるだろう。
会期:2023年4月15日〜6月18日
会場:国際芸術センター青森
住所:⻘森市⼤字合⼦沢字⼭崎152-6
電話番号:017-764-5200
開館時間:10:00~18:00
休館日:年末年始(12月29日~1月3日)および大学入学試験に関わる日程
料金:無料
開催11回目のテーマは「BORDER」。「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」(京都市内各所)
今年11回目の開催を迎える本写真祭のテーマは「BORDER」。京都文化博物館 別館、二条城 二の丸御殿 台所、両足院、出町桝形商店街、嶋臺(しまだい)ギャラリー、HOSOO GALLERYなどを会場に、15のメインプログラムが展開される。
参加作家 / グループは、松村和彦、マベル・ポブレット、ロジャー・エーベルハイト、山田学、石内都、頭山ゆう紀、山内悠、世界報道写真展、パオロ・ウッズ&アルノー・ロベール、高木由利子、ココ・カピタン、セザール・デズフリ、ボリス・ミハイロフ、デニス・モリス、ジョアナ・シュマリ、インマ・バレッロ。
会期:2023年4月15日〜5月14日
会場:京都市内各所
電話番号:075-708-7108(KYOTOGRAPHIE 事務局)
料金:[会期中販売] 一般 6000円 / 学生 3000円 / 中学生以下無料
※開館時間、休館日はプログラムにより異なる
美術館初個展が東京に巡回。「今井俊介 スカートと風景」(東京オペラシティ アートギャラリー)
鮮やかなストライプが印象的な絵画シリーズを手がけるアーティスト・今井俊介。その初の美術館個展「今井俊介 スカートと風景」が東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーに巡回する。会期は4月15日〜6月18日。
今井は武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コースを修了。具象と抽象、平面と立体、アートとデザインという境界を行き来しながら、その表現方法を探究し、独自の色彩感覚を生かした絵画制作を続けてきた新進気鋭のアーティストだ。
本展は2022年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された、美術館における初個展を東京に巡回するものだ。東京会場では、ストライプの絵画に至る過程ともいえる作品群を新たに追加。初期作品から新作までの絵画を中心に、立体作品や舞台映像作家・山田晋平との共作による映像作品、インスタレーション、ファッションブランドとのコラボなど、様々な表現技法で制作された作品群が紹介される。
会期:2023年4月15日〜6月18日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00〜19:00 ※入場は18:30まで
休館日:月(ただし5月1日は開館)
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 800円
夭折の天才という物語を超えて。「佐伯祐三―自画像としての風景」(大阪中之島美術館)
4月2日まで東京ステーションギャラリーで開催していた、画家・佐伯祐三(1898〜1928)の回顧展「佐伯祐三─自画像としての風景」が大阪中之島美術館に巡回する。
本展は3つの章とプロローグ、エピローグで構成されており、ときには年代を前後させながら佐伯の作風の変遷や表現、技術にとくに着目してその画業を追うものだ。
佐伯祐三の遺族から作品寄贈されたことが設立のきっかけのひとつでもあるという同館。東京展とはまた一味違った佐伯展が期待される。東京展のレポートはこちら。
会期:2023年4月15日〜6月25日
会場:大阪中之島美術館
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(5月1日は開館)
料金:一般 1800円 / 高校・大学生 1500円 / 小・中学生 500円
日本の写真はいかに「前衛」を受け継いできたのか。「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄」(千葉市美術館)
千葉市美術館で「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄」が開催中だ。会期は5月21日まで。
本展は、瀧口修造(1903〜1979)、阿部展也(1913~71)、大辻清司(1923〜2001)、牛腸茂雄(1946〜1983)という、それぞれ交流や師弟関係を持つ4人の活動をつなぎ合わせ、そこに共通して受け継がれた「前衛」写真の精神を見出すことで戦後写真史を追うものだ。2023年は瀧口が生誕120年、阿部が生誕110年、大辻が生誕100年、そして牛腸が没後40年という節目の年であり、これも本展開催の動機のひとつとなっている。レポートはこちら。
会期:2023年4月8日〜5月21日
会場:千葉市美術館
住所:千葉市中央区中央3-10-8
電話番号:043-221-2311
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)
休館日:4月17日(休室)、5月1日
料金:一般 1200円 / 大学生 700円
螺鈿で表現する近未来的な世界。「池田晃将『虚影蜃光』」(金沢21世紀美術館 デザインギャラリー)
伝統的な螺鈿技法に新技術を取り入れ「近未来的な世界観」を体現する池田晃将。その公立美術館では初となる個展「虚影蜃光」が金沢21世紀美術館で開催中だ。会期は9月18日まで。
池田の作品の大きな特徴は、伝統工芸である螺鈿技法と、ICチップ生産に用いられるパルスレーザーや超音波振動機といった現代の技術を組み合わせる点にある。
会場では、池田が制作活動を始めてから約10年のあいだに生み出された作品が前後期に分けて全14点が紹介される。レポートはこちら。
会期:2023年4月8日〜9月18日
会場:金沢21世紀美術館 デザインギャラリー
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
電話番号:076-220-2800
開館時間:10:00〜18:00(金土〜20:00)
休館日:月(ただし7月17日、9月18日は開館)、5月14日、7月18日
料金:無料
補作と模作による応答。「須田悦弘 補作と模作の模索」
都市のなかの自然のありように注目して作品を制作するアーティスト・須田悦弘。その個展「須田悦弘 補作と模作の模索」がロンドンギャラリー白金とギャラリー小柳の共同企画展として開催中だ。会期は6月24日まで。
現代アーティストの杉本博司によってタイトルを命名された本展では、いままで須田が制作してきた作品群を自然を模する作品、すなわち「模作」と呼称。それらに加え、近年注目を集めている須田の「補作」の仕事もあわせて紹介するというものだ。杉本博司が選んだ骨董の器にあわせて須田の作品は制作されており、杉本のお題に対して須田がどのように作品を通じて応答するのかがが見どころと言えるだろう。
会期:2023年4月8日〜6月24日
[ギャラリー小柳]
住所:東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル9F
電話番号:03-3561-1896
開館時間:11:00~19:00
休廊日:日月祝
[ロンドンギャラリー白金]
住所:東京都港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス4F
電話番号:03-6459-3308
開館時間:11:00~17:00
休廊日:日月祝
中ピ連スピリットの復活を試みる21年ぶりの新作。嶋田美子展「おまえが決めるな!」(オオタファインアーツ)
オオタファインアーツで、嶋田美子の21年ぶりとなる新作個展「おまえが決めるな!」が開催される。
嶋田美子は、1980年代後半から女性と戦争をテーマに作品を制作。長らく日本のフェミニズムアートの急先鋒を担ってきたアーティストだ。近年では、松澤宥や美学校など1960年代の日本における前衛芸術の研究者としても知られている。
今回の展示では、1972年に設立された「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合(中ピ連)」に着目。♀印のついたピンク色のヘルメットを用いた同活動は、今日まで評価されることが少なかったが、嶋田は性と生殖に関する女性の「自己決定権」を明確にした意義があると主張する。
会場では、半世紀も前にそのことにはっきりと異を唱えた中ピ連のスピリットを復活させることを試み、その決意表明を具現化した写真作品、ペインティング、映像作品が展示される。
会期:2023年4月15日〜6月10日
会場:オオタファインアーツ
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F
電話番号:03-6447-1123
開館時間:11:00〜19:00
休館日:日月祝
料金:無料
海外研究助成を受けた若手作家らの成果発表。「ポーラ ミュージアム アネックス展 2023 ―自立と統合―(後期)」(ポーラ ミュージアム アネックス)
公益財団法人ポーラ美術振興財団の助成による海外研修に参加した若手アーティストらの作品を展示する「ポーラ ミュージアム アネックス展 2023 ―自立と統合―」の後期が、東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで4月16日まで開催されている。今期の展示作家は秋山美月、佐藤幸恵、永井里枝の3名。
同財団は、日本の芸術分野の専門性の向上を目的に、1996年より若手アーティストの海外研修助成を開始。本展は、近年の研修員から採択された6名の作品を前後期に分けて展示し、研修成果をより多くの人々の目に触れる機会を創出するものだ。第21回目となる今回もポーラ美術館館長・木島俊介が監修を務め、「自立と統合」をテーマに作品を紹介している。
会期:2023年3月17日〜4月16日
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所:東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00〜19:00 ※入館は18:30まで
休館日:会期中無休
料金:無料
宮島の美学と対峙する。宮島達男「Numerical Beads Painting」(SCAI THE BATHHOUSE)
東京都・谷中のSCAI THE BATHHOUSEで、宮島達男の個展「Numerical Beads Painting」が4月15日まで開催されている。
本展に並ぶ新作シリーズ「Numerical Beads Painting」では、LEDの瞬きに代わって1から9までのアラビア数字が刻まれたアクリル製ビーズを使用。絵筆を手に絵画空間の永遠性へ向き合い、静止したビーズに動的な視覚効果を与えている。
記号が生みだす抽象化のプロセスを明らかにしながら、個々をつなぐ関係性の手探りの回復と集合性への考察を深めるという、宮島達男の美学が詰まった作品と対峙できる空間となっている。
会期:2023年2月28日〜4月15日
会場:SCAI THE BATHHOUSE
住所:東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
電話番号:03-3821-1144
開館時間:12:00〜18:00
休館日:日月祝
料金:無料