2023.4.7

エドワード・ゴーリーからジョルジュ・ルオー、エゴン・シーレまで。今週末に見たい展覧会ベスト10

今週開幕/閉幕する展覧会から、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

展示風景より、エゴン・シーレ《母と子》(1912)
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「エドワード・ゴーリーを巡る旅」(渋谷区立松濤美術館)


エドワード・ゴーリー 『うろんな客』 原画 1957年 ©2022 The Edward Gorey Charitable Trust

 渋谷区立松濤美術館で「エドワード・ゴーリーを巡る旅」展が4月8日に開幕する。

 エドワード・ゴーリーは20世紀後半に活躍したアメリカの絵本作家。不思議な世界観とモノトーンの緻密な線描で知られ、世界中に熱狂的なファンを持つつ。自身がテキストとイラストの両方を手がけた主著以外にも、挿絵、舞台と衣装のデザイン、演劇やバレエのポスターなどに多彩な才能を発揮した。

 本展は、そんな作家の終の棲家につくられた記念館・ゴーリーハウスで開催されてきた企画展から、「子供」「不思議な生き物」「舞台芸術」などのテーマを軸に約250点の作品で再構成したもの。謎めいた作品との邂逅を楽しみたい。

会期:2023年4月8日~6月11日
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
電話番号:03-3465-9421
開館時間10:00~18:00(金~20:00)
休館日:月(祝日の場合は翌火)
料金:一般 1000円 / 大学生 800円 / 高校生・60歳以上 500円 / 小中学生 100円

日本初公開作品も。「ジョルジュ・ルオー―かたち、色、ハーモニー ―」(パナソニック汐留美術館)

パナソニック汐留美術館ウェブサイトより

 19世紀末から20世紀前半のフランスで活躍した画家、ジョルジュ・ルオー(1871〜1958)の代表作を展覧する「ジョルジュ・ルオー―かたち、色、ハーモニー ―」が4月8日よりパナソニック汐留美術館でスタートする。

 宗教的主題や、晩年の輝くような色彩で描かれた油彩、デフォルメされた親しみやすい人物像で多くの人を魅了しているルオー。本展は、ルオーが自身の芸術を語るのに繰り返し用いたことば「かたち、色、ハーモニー」をキーワードに、画家が影響を受けた同時代の芸術や社会の動向、二つの大戦との関係にも触れながら、ルオーの装飾的な造形の魅力に迫るもの。

 パリのポンピドゥー・センターが所蔵する晩年の傑作《かわいい魔術使いの女》や《ホモ・ホミニ・ルプス(人は人にとりて狼なり)》、手紙やルオーの詩など、日本初公開作品を含む約70点が会場に並ぶ。

会期:2023年4月8日〜6月25日
会場:パナソニック汐留美術館
住所:東京都港区東新橋1-5-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00
休館日:水(5月3日、6月21日は開館)
料金:一般 1200円 / 大学・高校生 700円

キーワードは明治。「明治美術狂想曲」(静嘉堂文庫美術館)

黒田清輝 裸体婦人像 1901

 丸の内の静嘉堂文庫美術館で、現代の「美術」につながる諸制度・文化が生まれたこの明治時代を立脚点とする展覧会が4月8日に開幕する。

 江戸幕府が倒れ西洋文明が流入した明治時代は、政治体制・身分制の改革、西洋風の建築やファッションの普及など、社会の面でも文化の面でも人々の生活と意識に大きな変化をもたらした。「美術」という言葉が誕生し、美術館が初めて設置され、博覧会が開催されたのも明治時代だ。

 本展では、初めて重要文化財に指定された近代美術のひとつである橋本雅邦《龍虎図屛風》、論争を巻き起こした黒田清輝《裸体婦人像》など、創設者の岩﨑家とゆかりが深い作家の作品を展覧し、明治時代を見つめ直す。国宝《曜変天目(稲葉天目)》も出品。

会期:2023年4月8日~6月4日
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
開館時間:10:00~17:00(金〜18:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火)
料金:一般 1500円 / 大学・高校生 1000円 / 中学生以下 無料

世界を魅了する色。「『柿右衛門』の五色 ー古伊万里からマイセン、近現代までー」(戸栗美術館)

メインビジュアル

 渋谷の戸栗美術館で「『柿右衛門』の五色―古伊万里からマイセン、近現代まで―」展が開催される。

 濁手(にごしで)と呼ばれる純白の素地に、赤・青・緑・黄・金の5色の彩色を基本として優美な絵付けを施した「柿右衛門(かきえもん)様式」は、1670年代の佐賀・有田で完成された。本展では、世界を魅了した柿右衛門様式の素地や絵具の「色」に着目し、色絵作品約80点を展示。江戸時代の伊万里焼とマイセン、そして、近現代の「柿右衛門」作品を堪能したい。

会期:2023年4月8日~6月25日
会場:戸栗美術館
住所:東京都渋谷区松濤1-11−3
電話番号:03-3465-0070
開館時間10:00~17:00(金土〜20:00)  ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月火
料金:一般 1200円 / 高校・大学生 500円 / 中学生以下 無料

「こわくて、たのしいスイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~」(ベルナール・ビュフェ美術館)

フェリックス・ホフマン 絵本『おおかみと七ひきのこやぎ』より 小さな絵本美術館蔵 ©フェリックス・ホフマン

 三島のベルナール・ビュフェ美術館で4月8日より開催されるのが、「こわくて、たのしいスイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~」だ。

 印刷技術が発展した19世紀、スイスでは現在でも読み継がれている絵本が多く誕生した。本展では、長野県にある「小さな絵本美術館」の協力のもと、フィッシャーの原画やクライドルフの初版リトグラフ、ホフマンの手描き絵本など約130点を通してスイスを代表する3人の絵本の世界が紹介される。

会期:2023年4月8日~7月2日
会場:ベルナール・ビュフェ美術館
住所:静岡県長泉町東野クレマチスの丘515-57
電話番号:055-986-1300
開館時間10:00~17:00(11月~16:30) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:水、木(5月3・4・5日開館)
料金:大人 1200円 / 高校・大学生 600円 /中学生以下 無料

長期休館前最後の展示。「マリー・ローランサンとモード」(Bunkamura ザ・ミュージアム)

展示風景より、《ニコル・グルーと二人の娘、ブノワットとマリオン》 © Musée Marie Laurencin

 生誕140年を迎えたマリー・ローランサンの画業と、様々な才能がジャンルを超えて交錯することでパリ・モードの世界を堪能できる展覧会「マリー・ローランサンとモード」が、Bunkamura ザ・ミュージアムで4月9日に閉幕。同館はこれをもって長期休館に入る

 本展は、第1章「レザネ・フォルのパリ」、第2章「越境するアート」、第3章「モダンガールの登場」、エピローグ「蘇るモード」で構成。オランジュリー美術館やマリー・ローランサン美術館から集められた約90点が並ぶ。展覧会レポートはこちらから。

会期:2023年2月14日~4月9日
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号:050-5541-8600 
開館時間:10:00〜18:00(金土〜21:00) ※入館は閉館の30分前まで 
休館日:3月7日
料金:一般 1900円 / 大学・高校生 1000円 / 中学・小学生 700円 / 未就学児は無料

30年ぶりの回顧展。「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」(東京都美術館)

展示風景より、エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》(1912)

 芸術の爛熟期を迎えたウィーンに生き、28年という短い生涯を駆け抜けた夭折の画家エゴン・シーレ。その世界有数のコレクションを誇るレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、ウィーン世紀末美術を揃えた大規模展覧会「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」が4月9日で閉幕する。

 本展は、東京ではじつに30年ぶりとなるシーレの回顧展。ウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、シーレの油彩画やドローイングなど50点が並ぶほか、グスタフ・クリムトやコロマン・モーザー、オスカー・ココシュカ、リヒャルト・ゲルストルなど、シーレと同時代のウィーンを生きた作家たちを構成に加えることで、シーレが生きた時代を立体的に感じ取ることができる構成となっている。レポート記事はこちらから。またゲスト・キュレーターであるディータード・レオポルドのインタビューはこちらから。

会期:2023年1月26日〜4月9日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30〜17:30(金〜20:00) ※入室は閉室の30分前まで
休館日:月
料金:一般 2200円 / 大学・専門学校生 1300円(1月26日~2月9日に限り無料、公式チケットサイトで日時指定予約が必要) / 65歳以上 1500円 / 18歳以下(2004年4月2日以降生まれ)無料(公式チケットサイトで日時指定予約が必要)

「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」(三菱一号館美術館)

展示風景より、左から芳年《ま組火消しの図》(1879)、芳幾《吃又》看板絵(1894)、四代鳥居清忠《文覚》看板絵

 江戸後期を代表する浮世絵師・歌川国芳の門下でともに腕を磨き、最後の浮世絵師と呼ばれる世代として浮世絵衰退の時代に奮闘した2人の絵師、落合芳幾と月岡芳年。幕末を代表する2人の絵師のライバル対決を描いた展覧会「芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル」が東京・丸の内の三菱一号館美術館で4月9日まで開催中だ。

 本展は幕末明治の浮世絵を網羅する「浅井コレクション」を中心に、芳年をメインとする「西井コレクション」や国芳研究でも有名な「悳コレクション」などの浮世絵作品から、「新屋文庫」の新聞錦絵までを出品。芳幾・芳年の様々な作風からその画技を比較するとともに、江戸から明治の転換期における浮世絵のあり方についても考察するものとなっている。レポート記事はこちらから。

会期:2023年2月25日〜 4月9日
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内2-6-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00〜18:00(金、会期最終週平日、第2水〜21:00) 
休館日:3月6日、3月13日、3月20日
料金:一般 1900円 / 高校・大学生 1000円 / 中学生以下無料

未公開を含めた約180点を展示。「趙根在写真展 地底の闇、地上の光 ― 炭鉱、朝鮮人、ハンセン病 ―」(原爆の図 丸木美術館)

撮影=趙根在

 原爆の図 丸木美術館では、4月9日まで、「趙根在写真展 地底の闇、地上の光 ― 炭鉱、朝鮮人、ハンセン病 ―」が開催中だ。

 趙根在(チョウ・グンジェ、日本名:村井金一、1933~1997)は、1960年代から80年代にかけて、国内各地のハンセン病療養所を訪ねた写真家。隔離政策によって収容された入所者、とりわけ在日朝鮮人に焦点を当てながら、病や民族の複層的な差別のなかで生き続ける人間存在に迫る写真を撮り続けた。

 愛知県知多郡大府町(現・大府市)に生まれ、若くして炭鉱夫として働いていた趙。その後は、在日朝鮮人の舞踏団の照明係となって全国公演に帯同し、旅の途中で熊本県の国立療養所菊池恵楓園を訪れたことを機に、ハンセン病に関心を寄せるようになった。

 国立ハンセン病資料館の協力を得て開催される本展では、患者や回復者と分け隔てなく接した趙の多様な仕事が、未公開を含めた約180点の写真などを通して紹介されている。

会期:2023年2月4日~4月9日
会場:原爆の図 丸木美術館
住所:埼玉県東松山市下唐子1401
電話番号:0493-22-3266
開館時間09:30~16:30 ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:月(祝日の場合は翌平日)
料金:一般 900円 / 60 歳以上 800円 / 中高生・18歳未満 600円 / 小学生 400円

その越境性にフォーカス。「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」(京都国立近代美術館)

展示風景より、甲斐荘楠音《幻覚(踊る女)》(1920頃)

 絵画と映画。まったく異なる2つの領域で活躍した甲斐荘楠音(かいのしょう・ただおと、1894~1978)の「越境性」に迫る回顧展が、京都国立近代美術館で4月9日まで開催されている。

 甲斐荘は、美醜を併せ吞んだ人間の生を描いて注目を集めたのち、映画界へ転身。その後は、風俗考証などの活躍が多く、その画業が充分に顧みられない時期が続いていた。1997年に同館で開催された「甲斐庄楠音展」以来、25年の月日を経て開催される本展では、日本画家の枠に収まりきらない甲斐荘の「越境性」に焦点を当てたもの。絵画のみならず、多数の衣裳が並ぶ貴重な機会だ。なお、本展は2023年7月1日~8月27日の会期で東京ステーションギャラリーに巡回する。レポート記事はこちらから。

会期:2023年2月11日〜4月9日
会場:京都国立近代美術館
住所:京都市左京区岡崎円勝寺26-1
電話番号:075-761-4111
開館時間:10:00~18:00(金〜20:00) ※入館は閉館30分前まで 
休館日:月
料金:一般 1800円 / 大学生 1100円 / 高校生 600円 / 中学生以下無料