現代人の抱える問題とシーレ
今回東京で開かれるシーレの展覧会は、約30年ぶりに彼の作品をまとめて見ることができる機会となった。20世紀初めにつくられたシーレの作品を、21世紀のいま見ることにどんな意味があるのだろうか。
レオポルド氏は、シーレの作品は現代人が共感できる強いメッセージを訴えているという。
「いまを生きる私たちが共感できる点、それはなんと言っても彼が描いた絵画のテーマ、主題にあるでしょう。鋭敏な感受性や傷つきやすさ、孤独であること、自己存在のもろさ。理解されることへの不確実さ、不信感。シーレが悩み、表現するテーマは、今日の人びとが誰もが抱える悩みでもあります」。
「スマートフォンなどテクノロジーの力を借りれば、すぐに他人や情報とつながることができます。しかしいっぽうで、リアルな人間関係や人との絆は希薄になっており、私たちは非常に孤独な状態であると言えます。また、デジタル技術の発達によって、多くの情報や経験は、実際に体験せずにモニターの向こうでただ眺めるようになっています。結果、私たちの身体的感覚や感受性は、以前よりも弱まっているとも言えるでしょう。この点も、シーレの作品と結びつけて考えることができる問題です。肉体に対する認識や感覚を研ぎ澄まし、深く見つめるシーレの姿勢は、現代人にとっては取り戻したい感覚であるかもしれません」。