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エゴン・シーレ展ゲスト・キュレーター、ディータード・レオポルドに聞く(3) なぜ、いまシーレなのか

東京でエゴン・シーレの大規模展「レオポルド美術館 エゴン・シーレ ウィーンが生んだ若き天才」が約30年ぶりに開催されている(東京都美術館・4月9日まで)。ウィーンのレオポルド美術館の所蔵するコレクションを中心にシーレの作品50点を紹介する展覧会のゲスト・キュレーターを務めるのが、ディータード・レオポルド氏だ。レオポルド氏は、コレクションの創設者で同館の初代館長であったルドルフ・レオポルドの次男である。コレクター家の一員であり、キュレーターも務めるレオポルド氏に、なぜいまエゴン・シーレを見るべきか語ってもらった。

聞き手・文=高木友絵

ディータード・レオポルド氏

現代人の抱える問題とシーレ

 今回東京で開かれるシーレの展覧会は、約30年ぶりに彼の作品をまとめて見ることができる機会となった。20世紀初めにつくられたシーレの作品を、21世紀のいま見ることにどんな意味があるのだろうか。

 レオポルド氏は、シーレの作品は現代人が共感できる強いメッセージを訴えているという。

 「いまを生きる私たちが共感できる点、それはなんと言っても彼が描いた絵画のテーマ、主題にあるでしょう。鋭敏な感受性や傷つきやすさ、孤独であること、自己存在のもろさ。理解されることへの不確実さ、不信感。シーレが悩み、表現するテーマは、今日の人びとが誰もが抱える悩みでもあります」。

叙情詩人(自画像) 1911 レオポルド美術館所蔵 Leopold Museum, Vienna 「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」出品作品

 「スマートフォンなどテクノロジーの力を借りれば、すぐに他人や情報とつながることができます。しかしいっぽうで、リアルな人間関係や人との絆は希薄になっており、私たちは非常に孤独な状態であると言えます。また、デジタル技術の発達によって、多くの情報や経験は、実際に体験せずにモニターの向こうでただ眺めるようになっています。結果、私たちの身体的感覚や感受性は、以前よりも弱まっているとも言えるでしょう。この点も、シーレの作品と結びつけて考えることができる問題です。肉体に対する認識や感覚を研ぎ澄まし、深く見つめるシーレの姿勢は、現代人にとっては取り戻したい感覚であるかもしれません」。

現代作品との比較

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