演劇カンパニー・チェルフィッチュを主宰とする岡田利規と、舞台映像デザイナーの山田晋平が取り組む新しい形式の演劇である〈映像演劇〉。その最新作『ニュー・イリュージョン』が、東京・王子小劇場にて世界初公開される。チェルフィッチュにとって2021年2月『消しゴム山』東京公演以来、1年半ぶりの東京公演であり、東京での初めての〈映像演劇〉の上演となる。会期は8月21日〜8月28日。
〈映像演劇〉とは、スクリーンに投影された映像が人の感覚に引き起こす作用によって展示の空間を上演の空間へと変容させ、「演劇」というメディアそのものの潜在的な可能性を拡張させる試みであるとされ、2018年の熊本市現代美術館での展覧会より日本各地でそのシリーズの公演を続けている。これまでは、美術館や展示スペースで上演 / 展示をしてきたが、2022年3月に穂の国とよはし芸術劇場プラットで上演された『階層』では奈落と客席という劇場の機構を利用した上演 / 展示で劇場に進出した。
最新作『ニュー・イリュージョン』ではさらに、舞台と客席という通常の演劇の形式を踏襲し、劇場空間で〈映像演劇〉を「上演」するという。舞台の上に立つ一対のスクリーン、そこに映し出された男女が織りなす会話が舞台上に生み出す現実と虚構、現在と過去、存在と不在。それらが様相を変えながら間隙に姿を現す〈映像演劇〉の新たなイリュージョンに注目したい。
岡田は、本作の上演によせて「わたしはこれまでの〈映像演劇〉の実践を通して、この世界の何が現実であり何がイリュージョンであるのかを自分が正しく識別できている自信がまったくない、と自信を持って言うことができるようになりました。この、現時点での〈映像演劇〉の最新作『ニュー・イリュージョン』 を体験したら、あなたにもそうなってもらえるかもしれません」(プレスリリースより一部抜粋)と述べている。