ジェスパー・ジャストは、1974年生まれのデンマーク人アーティスト。現在はニューヨークとベルリンを拠点に活動している。1997年から2003年まで、デンマーク王立芸術アカデミーで学び、その後映像制作を開始する。作品は北米やヨーロッパ、南米やアジアの世界各地で展示され、2013年には、第55回ヴェネチア・ビエンナーレのデンマーク代表に選出された。
「アカデミーでは、多くの学生の例に漏れず、まずは絵画や彫刻の道を志しました。しかし在学中に、写真の仕事に取り組み、ヴィデオカメラを使うようになりました。最初は何もアイデアがなかったので、まずはストリートに出てみました。泣いたり踊ったり、役者に何か感情的な演技をするよう指示をして、そこにいる人々がどのような反応をするかを見る。それが私のひとつの原点になりました。現代社会において、とくに男性は、自分の感情をあまり表に出さないようにしなくてはなりません。でも、そうした感情の制御が突然失われたらどうなるか。《No Man Is An Island》(2002)のような作品では、それをドキュメンタリー風に撮影したのです」。
ジャストの初期の映像作品は、細部まで端正につくり込まれたものであると同時に、抑制的な規範社会に対する批判的な視点が内在している。ジャストは続ける。
「このプロジェクトを通じて、人間の反応や行動規範が、テレビや映画のようなポピュラーなメディアに強く影響を受けていることがわかりました。そこから、映像言語と感情表現に対する興味が生まれたのです」。