イタリアの作曲家、ジャコモ・プッチーニの遺作オペラ『トゥーランドット』。チームラボが初めてオペラの大規模なセノグラフィー(舞台美術)を手がけた同作の新制作が、スイスのジュネーヴ大劇場で世界初上演された。
6月20日の初演に始まり、7月3日まで7回にわたり上演される同公演では、チームラボが最先端のビジュアル・テクノロジーを駆使し、光の彫刻空間によってオペラ空間を創出。キャストはその空間に没入して一体となり、舞台と観客が境界なく連続する空間が生み出される。
舞台は回転するふたつの側面によって構成。ひとつはトゥーランドットを頂点とする近未来的なディストピアのゲームショーの世界。女が権力を握るこの世界では、男は女の遊び道具として着飾るか、女の下に監禁される運命にある。トゥーランドットに求婚する男たちは、クイズに参加して負けると、「花」をもぎとられるという。
ステージが回転すると、もうひとつの側面である、潜在意識の世界が出現する。万華鏡のようなひし形の「心の部屋」は、美しく魅惑的でありながら、巧妙さと欺瞞を連想させる。
チームラボは演出のダニエル・クレーマーとともに、5年にわたってプランニングを重ね、コンセプトや新解釈、そして各シーンの視覚的表現について模索してきたという。チームラボ・アーキテクツがステージデザインを担当したセットは、ガラスやアクリル、反射する表面などの素材を用いて制作。光の反射や吸収によって奇妙な空間や視覚的体験がつくりだされ、将来的な日本巡回にも期待したい作品だ。