「いかに世界は創発するか?」という現代の生命科学論的な思索を、身体や行為をともなった芸術実践へと拡張してきたアーティストの村山悟郎。その個展「Painting Folding」が、東京・天王洲のTakuro Someya Contemporary Artで開催される。会期は12月19日~1月16日。
村山は、有機的に麻布を織り進め、それによってできた領域に線描を施すペインティング作品で活動を開始。そのほかにもセルオートマトン・ドローイングや、要素をカットアップして組み替えた画像・映像など、再帰的なルールを設定したうえで、進化・学習・自己組織化など生命的なプロセスやパターンを作品に組み込んできた。
その後は、コンピューター・シミュレーションを中心的なモチーフとした制作を展開。2019年のあいちトリエンナーレでは、AIによるバイオメトリクス(顔や歩容)の技術に着目した作品で注目を集めた。また近年では、科学者とのコラボレーションも重要な要素となっている。
本展で村山は代表作の織物絵画を展開させ、ウイルスの構造にも大きく関係する「たんぱく質のフォールディング」の3次元構造の折りたたみの生成過程を参照し、新作を発表する。
パンデミックにおいて、高度に専門化した諸科学とテクノロジーのあいだで、ひとりの人間が取得できる情報量と、取りうる行動の選択肢をいかに結びあわせるか。そしてその美学を、これからどのようにアップデートできるのか。科学技術の認識論を人間のイマジネーションへと架橋する村山の実践は、こうした問いに対して多くの示唆を与えることだろう。