絵画を通じて情緒に目を向ける。上田智之、菅原彩美、畑山太志、塙康平による展覧会が3331で開催中

上田智之、菅原彩美、畑山太志、塙康平による展覧会「Rejoice! 豊かな喜びの証明」が、アーツ千代田 3331内・アキバタマビ21で開催されている。会期は12月27日まで。

塙康平 夢の中なら言える 2015

 上田智之、菅原彩美、畑山太志、塙康平による展覧会「Rejoice! 豊かな喜びの証明」が、アーツ千代田 3331内・アキバタマビ21で開催されている。本展は、参加作家でもある畑山がキュレーションを担当。生きることと絵を描くことのつながりから、喜びと懐かしさなど数学者の岡潔のいう情緒について目を向ける展覧会だ。会期は12月27日まで。

 上田は、空や田園風景、野菜、野花などをモチーフに、繊細な透明水彩の濃淡と緻密な描画によって、日常の光景の普遍的な美しさを描き出す。空は、その瞬間にしか発生しない光を留めるように描かれ、また真っ新な余白に存在する野菜や野花からは、軽やかな永遠性を感じることができる。

 水晶などの鉱物に美を見出す菅原は、豊かな色彩と重厚感のある油彩画を制作。内側で蠢くような流動性のある物質的な画面が特徴だ。光と闇、肉体と霊体といった相反するものの境界を超えて、宇宙の根源性を思い起こさせる。

上田智之 ひみつの場所 2020
菅原彩美 精霊たちの死のダンス 2020

 畑山は、自身が感じ取った目には見えない空気や存在をもとに、白色の緻密な描画によって、視覚では語りきれない身体感覚を描く。淡い色彩を感じさせる白色の画面は、目に見えないものを直感的に感じとる「素知覚」を開こうと試みる。

 幼少期を海辺の町で過ごした塙は、星々の集積によって満天に立ち現れる海景を、黒い光沢紙に白いペンの点描で描き出す。画面全体に広がる白点の肌理による光のハレーションは、広大な海の前にただひとり立ったときのような深い内省を感じさせる。ドローイングでは、何層にも薄く重ねられた繊細な色鉛筆による線によって、 人型のモニュメントや花々などが描かれ、優しさと悲しみ、愛情などの心の機微が具現化されている。

 本展のタイトル「Rejoice!」は、大江健三郎の小説『燃えあがる緑の木』から引用されたもの。人として生きることの賛美を示すこの語は、人間の有限性のうちにある、けっして失われることのない永遠性を見出そうと絵画制作を続ける4名の態度を反映しているという。

畑山太志 素視 2019-20
塙康平 大洗海岸 2015

編集部

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