現在、神奈川県・箱根町のポーラ美術館では、光や音など抽象的な素材を用いて、感覚に強く訴えかける作品を制作するケリス・ウィン・エヴァンスの日本における美術館初個展を開催中(~11月3日)。6月7日の開幕時点では、新型コロナウイルス感染症の影響により、本展の目玉となる大型ネオン作品《The Illuminating Gas…(after Oculist Witnesses)》の展示がかなわず、内容を変更して開催してきた。今回、イギリスからその作品が到着。新たに同館ロビーの吹き抜けで展示されている。
ケリス・ウィン・エヴァンスは、1958年ウェールズ・スラネリ生まれ。1984年にロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業した。現在もロンドンに活動の拠点を置いている。1970年代末に、映画作家デレク・ジャーマンのアシスタントを務めながら実験的な映像作品を発表し、作家としてデビュー。90年代以降は、彫刻やインスタレーション、写真、映像など表現の幅を広げながらも、いずれの作品にも、言語や認識、時間の概念が通底している。
近年では、ピレリ・ハンガービコッカ(ミラノ)、テート・ブリテン(ロンドン)、サーペンタイン・サックラー・ギャラリー(2014)などで個展を開催。そのほか、ミュンスター彫刻プロジェクト(2017)や、ヴェネチア・ビエンナーレ(2017)、あいちトリエンナーレ(2010)、横浜トリエンナーレ(2008)などの国際展に参加してきた。
本展でケリス・ウィン・エヴァンスは、ポーラ美術館の建築空間とのダイナミックな対話を試みる。繊細でエレガントな身振りで空間に介入し、変容させていくケリス・ウィン・エヴァンスの詩的な世界を堪能できる。