1950年代に具体美術協会に参加し、やがて天井から吊るしたロープをつかみ、足で絵の具を広げて作品を制作する「フット・ペインティング」を確立した白髪一雄(1924〜2008)。
その白髪が、明代中国の白話文学『水滸伝』の登場人物から題名を取った「水滸伝豪傑シリーズ」27点を展示する展覧会「白髪一雄:水滸伝豪傑シリーズ展」が、現代美術ギャラリー、ファーガス・マカフリーのバーチャルスペース「FM VIRTUAL」で開催されている。
なお、同展は2018年に白髪の故郷である尼崎市の総合文化センターで開催された企画展「没後10年 白髪一雄『水滸伝豪傑シリーズ』」をベースに、全国の美術館の協力によりオンラインで実現した。
50年代後半、白髪の参加する「具体美術協会」では、多くの場合、作品のタイトルを《作品》としていた。しかし、白髪がパリの画廊と契約し世界に向けて作品を販売することになり、すべて《作品》というタイトルでは個々の判別がつかないことが問題になる。そこで白髪は『水滸伝』に登場する豪傑たちの名前を作品名に使い始め、108人の登場人物の名がつけられた全108点の「水滸伝豪傑シリーズ」が生まれた。
幼少期より『水滸伝』に親しんでおり内容も熟知していた白髪。しかしながら『水滸伝』の豪傑からタイトルをつける理由を、単に豪傑の数の多さ故にいくらでもつけることができるからだと語っている。また、登場人物のイメージと作品とに直接的なつながりを見出さないようにと見る側への注意もうながしていた。
その後も白髪は、『水滸伝』以外にも『三国志演義』の地名や登場人物から題名を取ることもあり、長い期間に渡って中国文学から題名のインスピレーションを受けていたことがわかっている。
なお、ギャラリーオーナーのファーガス・マカフリーが解説をつとめ、キュレーターのポール・シンメルとアートアドバイザーのアラン・シュワルツマンを招いたバーチャル・ツアーバーチャルツアーも動画で公開されている。
白髪が具体美術協会で活躍し、今も高い評価を受ける1950年代~60年代にかけて描かれた「水滸伝豪傑シリーズ」。厳選された27点をオンラインで楽しんでみてはいかがだろうか。