1月18日に開館したアーティゾン美術館では、印象派を代表する画家クロード・モネ(1840~1926)の大回顧展「クロード・モネー風景への問いかけ」を開催する。会期は7月11日~10月25日。
世界で最も重要かつ網羅的なモネのコレクションを持つフランスのオルセー美術館、オランジュリー美術館との共同企画で行われる本展。オルセー美術館の主席学芸員・学芸部長であるシルヴィー・パトリが監修を務め、アーティゾン美術館とともに展覧会を構成。同館の所蔵作品を中心に、日本初公開の22点を含む62点のモネ作品が集結する。
本展の核となるのは、モネが生涯を捧げた「風景画」の全貌。画業の礎となったル・アーヴル時代から、セーヌ河沿いの行楽地の情景を多く描いたアルジャントゥイユ時代、河畔の村で移り変わる季節と自然を観察したヴェトゥイユ時代、フランス各地をめぐった1880年代の旅の時代、そして終の住処として40年以上を過ごしたジヴェルニー時代まで。これらの重要な時代と場所、そして晩年の「睡蓮」の連作へとつながる過程をたどることで、連続性のなかで発展した個々の作品とその革新性に迫る。
サン=ラザール駅から睡蓮の池にいたるまで、様々な風景を形容するときにモネが用いていたのが、フランス語で「おとぎの国」や「妖精の国」、広義で「夢のように美しい風景」を意味する「féérie」という言葉。アーティゾン美術館学芸課長の新畑泰秀は「モネは、自分が本当に描きたいと思った風景に対してこの言葉を用いたのではないでしょうか。単純に風景を画布に写し取るのではなく、自分がそれをどう感じ、どう描き出すかということを考えていたのです」と語る。
また本展では、時系列でモネの作品を展覧するだけでなく、同時代の様々な視覚表現にもフォーカス。モネの画業に大きな影響を与えた画家の作品や写真作品、浮世絵などの日本美術、水辺の情景を視覚化したエミール・ガレらによるアール・ヌーヴォーの工芸作品もあわせて紹介する。
例えば、1860年代半ばにモネも戸外制作を行ったフォンテーヌブローの森をとらえた、ギュスターヴ・ル・グレの写真作品《フォンテーヌ・ブローの森、バ=ブレオの下草》(1852)は日本初公開。また、自身も画家であったエティエンヌ・クレメンテルが1920年頃に撮影した、様々なモネの姿も見ることができる。加えて、オランジュリー美術館館長のセシル・ドゥブレによるキュレーションのもと、現代の映像作家アンジュ・レッチアがモネにオマージュを捧げる映像作品も展示される。
それまでの風景を描いた作品のあり方を根底から覆し、新たな時代の世界観とその詩情を伝達する手段として風景画を刷新したモネに注目する本展。土地と画業の関係や、時代を交差する様々な美術作品との影響関係も見ることのできる新しいモネ展に、期待が高まる。
※アーティゾン美術館は新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、2020年3月15日まで臨時休館。