2019.10.28

やわらかな色彩表現に挑んだ新作。佐藤翠の初美術館個展「Diaphanous petals」がポーラ美術館で開催へ

2017年から翌年にかけてフランスに滞在し、古典的なモチーフに興味を抱くようになったという画家・佐藤翠。そのヨーロッパ滞在による作風の変化をうかがえる個展「Diaphanous petals(ダイアファナス・ペタルス)」が、神奈川県・箱根にあるポーラ美術館の「アトリウム ギャラリー」で開催される。会期は12月15日〜2020年4月5日。

 

佐藤翠 Diaphanous pink window I 2019 キャンバスにグリッター、油彩、アクリル絵具 194.5×259.3cm Photo by Kenji Takahashi (C) Midori Sato, Courtesy of Tomio Koyama Gallery / Koyama Art Projects
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 服や靴が並ぶクローゼットや、四季折々の花や果物を強い色彩で表現することで知られている画家・佐藤翠。その美術館での初個展「Diaphanous petals(ダイアファナス・ペタルス)」が、12月15日よりポーラ美術館の現代美術を展示するスペース「アトリウム ギャラリー」で開催される。

 本展は、ポーラ美術振興財団が1996年より助成してきた若手アーティストを紹介する「HIRAKU Project」の第10回。ドレスやハイヒール、花、果実といったモチーフを表現する佐藤の新作6点を発表する。

佐藤翠 Bouquet of roses I 2019 キャンバスに油彩、アクリル絵具 © Midori Sato

 佐藤は1984年愛知県生まれ。2008年名古屋美術大学卒業。13年にVOCAの大原美術館賞を受賞。17年から1年にわたってポーラ美術振興財団在外研修員としてフランスに滞在したことから、古典的なモチーフにも興味を抱くようになったという。

 ガラス壁から自然光が差し込む開放的なポーラ美術館の展示空間にインスピレーションを受けたという佐藤は、これまでの閉ざされた室内を描いた「クローゼットシリーズ」から一転し、ファッションアイテムがひしめくショーウインドウを描いた《Diaphanous pink window I》(2019)で、やわらかな光で満たされた空間を描きだした。ショーウインドウの衣服は、計算された構図のなかで浮遊感を漂わせている。いっぽう、佐藤がこれまで連作として描いてきた花やカーペットをモチーフにした作品《Bouquet of roses I》(2019)では、装飾性と、静物画のような古典的な要素が見だされる。

 なお本展と同時に、シュルレアリスム誕生から日本における超現実主義の展開に注目する展覧会「シュルレアリスムと絵画」も開催される。具象と抽象、現実と想像の世界を、自然光の差し込む展示会場で体験してほしい。