佐藤翠は1984年愛知県出身の画家。2004年に名古屋芸術大学絵画科洋画コースに入学し、在学中にはフランスのディジョン国立美術大学への交換留学を経験。08年に同大学を卒業し、その後10年に東京造形大学大学院造形学部で修士課程を修了した。また昨年より、平成29年度ポーラ美術振興財団在外研修員として1年間フランスに滞在した。
色とりどりの服がかかったクローゼットや高いヒールの靴が並ぶシューズラック、鮮やかな花々といったきわめて女性的なモチーフを選び、具象性と抽象性が共存する絵画を手がけてきた佐藤。手の動きの素早さが伝わってくるような大胆なタッチと鮮烈な色彩で構成された画面は、純粋に絵画に向かうことへの喜びに満ちている。
近年は、東京を中心に数多くの個展を開催してきたほか、資生堂ギャラリーでのグループ展「絵画を抱きしめて Embracing for Painting -阿部未奈子・佐藤翠・流麻二果展-」(2015)や、「あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ」といった芸術祭にも参加。
加えて、芥川賞受賞作家・中村文則の小説『去年の冬、きみと別れ』(2013、幻冬舎)の装丁画を手がけたほか、資生堂が発行する文化誌『花椿』において、原田マハの短編小説と挿画でコラボレーションをするなど、さらに活躍の場を広げている。
そんな佐藤の個展「Glimmer of night —夜の煌めき—」が、東京・青山の招待制アートサロン<SCÈNE>で開催される。本展では、佐藤が1年におよぶパリでの滞在のなかで制作したという近作を公開。
いずれの作品も、街灯の明かりを映すセーヌ川や暗がりに光る宝石の輝きといったパリの夜の魅力が、美術館や街角のショーウィンドウの中のドレスやシューズ、色鮮やかな果物から得た着想と重ねて描かれるものだ。
加えて、佐藤にとって初の試みとなる「フルーツ」シリーズも公開。古典的なモチーフとされる果物を、どのように自身の絵画に落とし込むのだろうか。1年間のフランスでの滞在研修を経て、さらに独自の絵画表現を強めた佐藤の近作および新作に期待したい。