10月5日、ヨウジヤマモトは、公式オンラインストア「THE SHOP YOHJI YAMAMOTO」の世界初となるリアル店舗をオープン。六本木ヒルズに新設されたポップアップスペース「ヒルズ ボックス」に展開する同店内では、メディアアーティストの落合陽一による写真展「燐光する霊性 ―布と風、残響する軀と機械―」が同時開催されている。
オン・オフ問わず着用し、いわば落合のトレードマークとも言えるヨウジヤマモトの服。10代より親しんできたブランドの魅力を落合は次のように語る。「僕は風に吹かれる布の姿が好きです。ヨウジヤマモトの服も、風に吹かれて布がなびくイメージが強く、布のシルエットに“霊性”を感じる。また、海外では“それは日本のトラディショナルな衣装ですか?”と聞かれることも多く、伝統的で定番的な側面と、様々な国の文化を吸収しながら変容していくスタイルに魅力を感じます。ヨウジの服の良さを語ろうと思えばいつまででも語れますね(笑)」。
落合自身が「自宅のクローゼットに似ている」と言い表す、ポップアップストアの店内。オンラインストア限定販売の「S’YTE(サイト)」の最新アイテムを中心に、落合写真展とEC限定ブランド「S'YTE(サイト)」がコラボレーションした限定アイテムも並ぶ。
作品は店内のプラチナプリント1点を含む写真作品5点と立体作品1点、店外から見る映像作品1点からなり、本展タイトルにある「燐光」や「霊性」が通底するテーマだ。例えば、《燐光する部品》(2019)では、深圳でとらえたスマートフォンのパーツが、《燐光する人》(2019)では信号機が、《枯れ木と霊性》(2019)では落合が一貫してとらえてきた枯れ木が被写体となり、各テーマを浮き彫りにする。
そうした作品に取り囲まれるように配され、本展の起点となったという作品が、《残響する軀と機械》(2019)だ。規則的な動きを繰り返すロボットアームの動きが印象的な本作。《枯れ木と霊性》と対比する外観を持ち、絡み合いながら風になびくオープンリールの磁気テープが、リアルタイムで録音と再生を繰り返し、ひとつの「循環」を生み出していることがわかる。
本展ステートメントのなかで「形を変幻させる布のシルエットに霊性を感じてしまう。風景を眺めながら、自然の見せる姿の中に、この感覚に近しいものを日々探している」という思い、そして、社会の変化のなかで生まれて消える様々な事象について「すべてはつながっている」と記している落合。本展の作品は、そうした落合の達観的な眼差しを追従できる場とも言えるだろう。
なお現在はライカプロフェッショナルストア東京にて写真展「情念との反芻 -ひかりのこだま、イメージの霊感-」を開催中(〜10月12日)の落合。あわせて鑑賞することをおすすめしたい。