13世紀末にオーストリアへ進出後、同地を拠点に勢力を拡大し、広大な帝国を築き上げたハプスブルク家。数世紀にわたってヨーロッパの中心に君臨し、また豊かな財とネットワークを用いて世界屈指の美術品・工芸品のコレクションを築き上げた。
そのコレクションを絵画や版画、工芸品、タペストリー、武具など約100点で紹介する展覧会「ハプスブルク展」が、国立西洋美術館で開催される。会期は10月19日~2020年1月26日。
本展のスタートは、同コレクションの礎を築いた神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世ゆかりの絵画や武具。第1章では、一門の系譜を示す重要なツールであった肖像画や、「中世最後の騎士」と呼ばれた皇帝が着用した甲冑も見ることができる。続く2章では同家内にとどまらず、ヨーロッパ史上の稀代のコレクター、ルドルフ2世も紹介。デューラー、ホルツィウスの作品や、精巧な細工が施された工芸品が並ぶ。
ハプスブルク家は16世紀半ば、オーストラリア系とスペイン系に分裂し、両家間では互いの近況を知らせるために肖像画が利用された。3章ではなかでも、ベラスケス晩年の傑作《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》(1659)といった作品に注目。また最後のセクションでは、同家の最も重要なコレクターのひとりである大公レオポルト・ヴィルヘルムの豊かな絵画コレクションを見ることができる。
4章では、マリア・テレジアや市民革命で命を落とすその娘マリー・アントワネットなど、激動の時代を生きた同家の人々の肖像画を展示。そして5章では帝国が敗戦により崩壊し、その栄華が終焉を迎えるまでを追い、ウィーン美術史美術館の立役者であるフランツ・ヨーゼフ1世と、その妃エリザベトの肖像画やゆかりの品々を展示する。
本展は、質・量ともに世界屈指のハプスブルク家コレクションをまとめて見ることができる貴重な機会。同家の人々のキャラクターや時代ごとの特色とともに、きらびやかな作品の数々を堪能したい。