フランスの王妃、ファッション・アイコン、異国の裏切り者、革命の犠牲者など、様々なアイデンティティを持つマリー・アントワネット。歴史上の人物として、書籍や伝記、映画で多く語られ、漫画や小説、広告、ゲームにもそのイメージが頻繁に出現している。
そんなマリー・アントワネットの人生に迫り、そのイメージの変遷や現代文化に与えた影響にフォーカスする展覧会「マリー・アントワネット、イメージのメタモルフォーゼ」が、10月16日よりパリのコンシェルジュリーで開催される。
会場となるコンシェルジュリーは、中世フランス王国の宮殿であり、多くの王族や貴族が収容された牢獄でもあった。マリー・アントワネットは、1793年にここに投獄され、生涯最後の10週間を過ごした。本展では、その人生最後の時を過ごした牢から始まり、シャツや靴、ベルト、裁判や刑執行に関する数々の資料を紹介する。
18世紀後半から19世紀初期に生まれた「有名人」という新しい概念を代表するマリー・アントワネットには、多様なイメージが与えられていた。本展では、そのイメージの変遷を公的、政治的、歴史的なイメージと、映画によって紹介される人物像といった4つの側面からたどる。エリザベート=ルイーズ・ビジェ=ルブランが描いたマリー・アントワネットの肖像画や、処刑台に向かう姿が描かれた歴史的な絵画などが展示される。
また、情熱や空想、肉体、議論を表す要素が含まれた、マリー・アントワネットを象徴する作品や資料も展示。例えば、マリー・アントワネットの象徴的な顔の1.5倍の高さだった盛り髪からインスパイアされた作品や、貧しい民衆に対して「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」という発言を皮肉る風刺画、処刑された首をモチーフにした写真などがある。
なお、マリー・アントワネットが現代の漫画、小説、映画の主人公として登場し、現代の若い女性の象徴としてメディア化されたことも多くある。池田理代子のマンガ『ベルサイユのばら』やソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』など、新しい視点からマリー・アントワネットの姿を描いた作品を本展で見ることもできる。
「軽率、浪費家」だったと言われるいっぽう、殉難でもあった悲劇的なマリー・アントワネット。その全貌に迫る機会をお見逃しなく。