2019.7.17

奈良美智、ナムジュン・パイク、マーク・ロスコも。ハラ ミュージアム アークの「開架式収蔵庫」に注目

群馬県・伊香保にあるハラ ミュージアム アーク。磯崎新が設計し、3つの展示室と特別展示室「觀海庵(かんかいあん)」を有する同館で、通常は公開しない作品収蔵庫を来館者に向けて案内する取り組みが行われている。

開架式収蔵庫 撮影=齋藤さだむ
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 通常、美術館が公開することはない作品の収蔵庫。その一部を特別公開するという画期的な試みが、群馬県・伊香保のハラ ミュージアム アークで行われている。

 ハラ ミュージアム アークは、東京・品川にある原美術館の別館として1988年に開館した美術館。黒で統一された建物は、プリツカー賞を受賞した磯崎新による設計だ。敷地内には、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル オトニエル、オラファー・エリアソンなどの作品も点在し、同館の特徴のひとつとなっている。

ハラ ミュージアム アーク。中央はジャン=ミシェル オトニエル《Kokoro》(2009)

  この美術館では2008年に「開架式収蔵庫」を新たに増設し、以来、現代美術コレクションの一部を観覧する機会を提供してきた。毎週日曜日に予約制で行われている開架式収蔵庫ツアーでは、学芸員による作品解説とともに、収蔵庫内を見学することができる(中学生以上対象)。

 現在、開架式収蔵庫にある作品は約140点(変動あり)。奈良美智のペインティングや、名和晃平の「PixCell」シリーズ、磯崎新のレリーフ、森村泰昌の「セルフポートレート」シリーズ、マーク・ロスコなどが含まれており、誰もが知るアーティストたちの作品がぎっしりと詰まっている。

 収蔵庫内は定期的に展示替えも行われるため、壁面に展示される作品は都度変わるが、いずれも至近距離で作品を見ることができ、貴重な体験となることは間違いない。

 国内では宮城県美術館が2024年度のリニューアルを機に「見える収蔵庫」を計画しているほか、海外ではオランダのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館が、収蔵庫すべてを来館者が閲覧できる新棟「DEPOT BOIJMANS VAN BEUNINGEN」を建設するなど、展示されていない(眠っている)作品にも光を当てようとする傾向が見られる。まずはこのハラ ミュージアム アークで、収蔵庫の中に入ってみてはいかがだろうか。

「DEPOT BOIJMANS VAN BEUNINGEN」の内観イメージ
建設中の「DEPOT BOIJMANS VAN BEUNINGEN」