通常、美術館が公開することはない作品の収蔵庫。その一部を特別公開するという画期的な試みが、群馬県・伊香保のハラ ミュージアム アークで行われている。
ハラ ミュージアム アークは、東京・品川にある原美術館の別館として1988年に開館した美術館。黒で統一された建物は、プリツカー賞を受賞した磯崎新による設計だ。敷地内には、アンディ・ウォーホルやジャン=ミシェル オトニエル、オラファー・エリアソンなどの作品も点在し、同館の特徴のひとつとなっている。
この美術館では2008年に「開架式収蔵庫」を新たに増設し、以来、現代美術コレクションの一部を観覧する機会を提供してきた。毎週日曜日に予約制で行われている開架式収蔵庫ツアーでは、学芸員による作品解説とともに、収蔵庫内を見学することができる(中学生以上対象)。
現在、開架式収蔵庫にある作品は約140点(変動あり)。奈良美智のペインティングや、名和晃平の「PixCell」シリーズ、磯崎新のレリーフ、森村泰昌の「セルフポートレート」シリーズ、マーク・ロスコなどが含まれており、誰もが知るアーティストたちの作品がぎっしりと詰まっている。
収蔵庫内は定期的に展示替えも行われるため、壁面に展示される作品は都度変わるが、いずれも至近距離で作品を見ることができ、貴重な体験となることは間違いない。
国内では宮城県美術館が2024年度のリニューアルを機に「見える収蔵庫」を計画しているほか、海外ではオランダのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館が、収蔵庫すべてを来館者が閲覧できる新棟「DEPOT BOIJMANS VAN BEUNINGEN」を建設するなど、展示されていない(眠っている)作品にも光を当てようとする傾向が見られる。まずはこのハラ ミュージアム アークで、収蔵庫の中に入ってみてはいかがだろうか。